2021 Fiscal Year Research-status Report
異文化の境界に生きる外国籍教員の役割:日本の公立高校を例に
Project/Area Number |
21K20209
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
王 一瓊 大阪大学, 人間科学研究科, 特任助教(常勤) (70913523)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 外国籍教員 / 公立高校 / 異文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、参与観察及びインタビューを通して、外国人生徒の指導に従事する日本の公立高校に勤務する外国籍教員の複合的な役割を解明することを目指した。そこで、本年度は外国籍教員が置かれた政策・制度といった社会的コンテクストの変遷の流れや、外国人児童生徒に関係する教育政策の新たな動きといったマクロな面をまとめた。それを踏まえて、関西圏の公立高校でフィールド調査を実施した。例えば、外国人生徒向けの入学オリエンテーションや、外国人生徒の保護者との三者面談などにも臨席し、外国籍教員の実践を観察した。また、外国籍教員2名に対してインタビュー調査を実施した。 11月刊行の『社会言語学』21号で、アメリカ合衆国カリフォルニア州のエスニック・マイノリティ教員の教育実践を取り上げ、多文化の活用とエンパワーメント環境の構築について論じた。当該地域のエスニック・マイノリティ教員の教育実践は、日本の教育現場に対しても示唆的な取り組みであり、本研究と深く関連する。特に現段階では、以下の3点を明らかにすることができた。 ①外国籍教員は日本の学校文化と外国人家庭の母文化の溝を埋める役割を果たしているだけではなく、異文化コミュニケーションで生じた衝突を調和していくコーディネーターとしての役割も果たしている。 ②外国籍教員は学生指導、部活指導、進路相談などを通して、外国人生徒の心的ケアを行なっている。外国人生徒を安心させる居場所づくりにも大きく貢献している。 ③外国籍教員は外国人生徒との距離が近く、日本人教員よりも多くの指導や心理的なケアを外国人生徒に求められてしまう傾向がある。そのため、外国籍教員は外国人生徒の要求に対してストレスに感じる場合もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄にも記載したように、外国籍教員2名に対してインタビューを実施できたことや教育現場での外国籍教員の実態を観察できたことを考慮すると、おおむね順調に研究が進展しているといえる。ただし、フィールドである公立高校の人事異動や、コロナ対策などで現場教員が平時よりも多忙だったなどが原因で、現地調査とそのまとめに若干の遅れが見られる。また、一部まだ公開できていない研究成果が含まれているため、翌年度は今年度の成果を論文化することに努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度扱った入学オリエンテーションや、進路指導だけではなく、外国籍教員が担当する言語の授業(日本語、母語)でのフィールド調査を実施したい。調査を深めていくために、研究対象者をさらに増やし、インタビュー調査を進めていく予定である。また、今年度の研究成果をまだ一部公開していないため、関連する分野の研究者との意見交換を活発に行い、学会発表や論文の準備に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
今年度の予算を執行する際に、余剰金がやむを得ずに発生した。次年度において、32円の余剰金を含めて予算額を計画通りに執行する予定である。
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Research Products
(3 results)