2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K20213
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
梅田 崇広 愛媛大学, 教育学部, 講師 (90908899)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | トラブルの不活化 / エスノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小中学校における児童生徒間の人間関係上のトラブル(以下、児童生徒間トラブル)がいかなる解釈過程で「問題」化される/されないのか、その生成・変容・消失過程を明らかにするものである。そのうえで、2022年度の研究計画は、児童生徒間トラブルの消失過程に関する事例分析を行うことであった。本年度の研究実績は、以下のように整理される。 児童生徒間トラブルの消失過程に関して、トラブルが学級内で一度顕在化しつつも、不活化していく過程が教師や生徒のいかなる相互作用過程によって達成されているのか、という点について考察した。具体的に、学級内の成員間で微細な認知のズレを生じさせながら、トラブルの不活化が達成されていた点や、トラブルについての物語が、複線的なリアリティによって紡がれている点などを明らかにした。この成果は、日本教育社会学会誌『教育社会学研究』第111集に、「生徒間トラブルの不活化過程の記述―教師―生徒による不活化過程の相補的達成―」として掲載されている。 2022年度までに、児童生徒間トラブルが生成・変容・消失過程の記述を行ってきたが、2022年度の研究成果から、新たな課題として、トラブルの「解決」や「合意」をめぐる教師や生徒の認識や解釈過程の変容について分析する必要性があることがうかがえた。そのため、2023年度は、トラブルをめぐる学級成員間の「合意」に焦点を当てながら、継続的に学校でのフィールドワークを行い、事例分析をすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021度までの事例分析の成果を投稿論文として整理することができたため、計画はおおむね順調に進展している。しかしながら、2022年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、特に小学校での十分なフィールドワーク調査を実施することが困難であった。そのため、次年度、小学校でのフィールドワークを実施し、得られた事例をもとにデータ分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2021年度に検討した分析枠組みを用いて、児童生徒間トラブルの「合意」や「解決」をめぐる相互作用過程の特質について検討を行う。これまで、中学校を中心にフィールドワークを実施してきたため、2023年度は小学校を中心にフィールドワークを行い、中学校の生徒間トラブルと小学校での児童間トラブルそれぞれの生成・変容・消失過程の特質や共通性について検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、計画をしていた小学校でのフィールドワーク調査を実施することが困難となった。そのため、研究計画を変更し、次年度に小学校でのフィールドワーク調査を実施し、データ分析をした結果を、学会発表や投稿論文等として報告することとした。その際、個人情報保護等の観点から、通常の業務とは切り離したパソコン等でのデータ管理が必要となる。そのため、データの管理・分析のためのハードディスクやパソコン等物品費として使用する計画である。また、学会発表等を行うための旅費に使用する計画である。
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