2021 Fiscal Year Research-status Report
中欧の美術教育から構造化した他者と共同する造形の授業による教員養成の基礎研究
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21K20223
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
家崎 萌 金沢学院大学, 教育学部, 講師 (70908706)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 美術教育 / オープンフォーム / 教材開発 / ポーランド / 共同制作 / 場 / 空間 / 他者 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 ポーランド発祥のオープンフォーム理論や実践に関する資料収集と整理:2000年代から2010年代に実施された展覧会に際してまとめられたオープンフォームに関する調査や論考を収録した書籍を中心に、先行研究や文献資料を収集、整理した。戦後ポーランドの美術に影響を与えた社会や政治の動向とオープンフォーム理論の成立と展開を照応させる年表資料の作成、文献調査をデータ資料にまとめ、考察の材料とした。 2 試行的な実践と教材制作の事例の検証:オープンフォームによる美術教育の方法を組み込んだ大学院生等による試行的な実践(2020年5月から2021年5月)を検証し、作品については2021年InSEA国際美術教育学会ヨーロッパ地方会議スペインバエサ会議にて発表するとともに、「『オープンフォーム』を応用した場を相互に共有する共同制作/創作―造形表現と身体表現による『一畳プロジェクト』の制作/創作プロセスに着目して―」と題し、『金沢学院大学紀要第20号』に発表した。保育者を対象に実施した教材制作の事例(2021年7月から8月)について、「オープンフォーム」理論や実践において重視される「他者と共有する場」の観点から教材を検証し、「イメージ生成の場として働くICT機器を用いた手づくり絵本―免許法認定講習「保育内容『表現』の指導法」と題し、『未来を拓く教育実践学研究:共創型対話学習研究所機関紙(論文集)第6号』に発表した。 3 パイロット実践のための環境整備:文献調査から見出された実践事例や日本の造形遊び等で扱われる用具や材料、日本でパイロット実践に用いる教室環境を照応しながら、必要な用具や材料を順次整備、整理を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オープンフォームに関する資料収集について、ポーランド語版の書籍や辞書の廃盤があり、英語版書籍の入荷にも時間を要した。順次収集した文献を精読し、文献データ表や年表にまとめた。現在は、その作成した資料を基に、ポーランドにおけるオープンフォーム成立の背景とオープンフォームを提唱したオスカー・ハンセンの思想との関連について考察を進め、論文を執筆している。 環境整備に関しては、先行研究における実践事例や今年度検証した試行事例、日本でのパイロット実践に用いる教室環境を照応しながら、必要な用具や材料の整備・整理を進めた。資料収集とデータのまとめに想定以上の時間を要したため、一部の環境整備が遅れている。 日本の大学における美術授業の教材についての文献調査からは、大学生が他者と交互に制作する着目すべき先行研究を2件抽出したところである。新型コロナ感染防止の対応のため、予定していた国内の出張調査は取りやめた。そのため、既に実施していた大学院生と地域のアーティストによる試行的な実践事例1件と、2021年年度に実施した保育者を対象とした教材制作の事例の分析を行った。2つの事例検証から、「参加者が交互に制作するスタイル」「制作プロセスの文書化による認識」「場の共有」の今後のパイロット実践につながる要点が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で設定した4つの課題である「1 オープンフォームの資料収集とポーランドの実地調査すべき対象の明確化」「2 日本の大学における『自らの意図と異なる他者と造形すること』を重視した教材の調査による実地調査すべき大学授業の明確化」「3 ポーランドや日本における美術館・大学等への実地調査による、資料収集や関係者への聞き取り」「4 収集した資料を整理、日本の教科書や指導書と照応し、ふさわしい教材の視点や構造を抽出・整理し教材を試作し、環境整備の上、パイロット実践により試作の教材を検証」のうち、2022年度は3、4を中心に研究を進めていく。 3 ポーランドの実地調査に関しては、新型コロナウィルス感染の影響や中東欧地域の地域情勢の影響を見極めつつ判断する。そのため、日本の大学の実地調査やポーランド美術の研究者への取材を優先して実施していく。 4 文献調査の論考を完成させ、2022年9月に学術論文雑誌に投稿を行う。2022年度後半には、これまでの文献調査や事例検証の結果を踏まえ、パイロット実践を立案、実践し、検証する。
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Causes of Carryover |
1 新型コロナウィルス感染防止の対応から、初年度に予定していた国内の大学等への出張を伴う調査が取りやめになった。新型コロナや地域情勢の影響を考慮しながら、今後の国内外の出張調査について判断していく。出張を伴う実地調査が難しい場合には、遠隔会議で可能な調査方法へ代替し、そのためのオンライン機器等の整備、中欧の文献資料の追加収集や資料整理のための物品等の費用に充てる。 2 中欧の文献資料の収集に関して、廃盤になっている書籍で購入できないものがあった。また、文献調査に時間を要したことから、文献調査に基づいて立案するパイロット授業の計画が確定せず、実践・検証に必要な機器や材料用具の整備も一部遅れているためである。
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Research Products
(3 results)