2022 Fiscal Year Research-status Report
A Qualitative Research Study on the Practices of Schools and Third-Party Committees Regarding Child Suicide Cases
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21K20242
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
今井 聖 琉球大学, 教育学部, 講師 (40907515)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 児童生徒の自殺 / 第三者委員会 / 事実認定 / いじめ / 学校の事後対応 / トラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も前年度に引き続き、研究実施計画にもとづいて、(2)第三者委員会の調査報告書の収集・分析、(3)第三者委員会の委員経験者へのインタビュー調査を実施した。 なお、(1)児童生徒の自殺事件に対応した学校関係者へのインタビュー調査に関しては、新たな調査協力者を得ることはできなかった。 (1)に関しては、在籍する児童生徒の自殺事件を経験した学校教員へのインタビュー調査から得られたデータの分析を行なった。投稿論文として査読を受ける過程を通じて、データの分析結果をどのような文脈に位置づけることができるかを再検討した。(2)に関しては、近年組織された第三者委員会の調査報告書の収集を継続的に実施するとともに、収集済みの調査報告書についての分析を進めた。その成果の一部は、日本教育社会学会第74回大会で発表した。さらに、分析の結果を論文にまとめるための作業として、そもそも「第三者委員会」とはいかなるアクターであるのかという点について、法学的・行政学的・社会学的な考察を行なった。特に、児童生徒の自殺事件との関係が深い、いじめの「重大事態」調査の第三者委員会については、地方公共団体の第三者委員会に含まれるものでありながらも、さまざまな点で固有の特徴を有するものであることが確認された。(3)に関しては、第三者委員会の委員経験者へのインタビュー調査を継続的に実施した。特に、第三者委員会のなかで中心的な役割を果たすことの多い弁護士の委員経験者を対象に聞き取りを行い、第三者委員会における事実認定や評価とはどのような性質の活動として理解可能・理解すべきものであるのかを明確にするねらいで、調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、児童生徒の自殺事件が発生した場合に、(a)事後対応にあたる学校はいかなる困難を抱え込みうるのか、(b)第三者委員会によって行われる事実関係の調査にはいかなる実践的特徴があるのか、という2つの問いを設定している。これらの問いに答えるために本研究では(1)児童生徒の自殺事件の事後対応にあたった経験を有する学校関係者へのインタビュー調査、(2)第三者委員会 の調査報告書の収集・分析、(3)第三者委員会の委員経験者の経験についてのインタビュー調査を遂行し、それらの作業から得られた知見を学術論文等にまとめることを目的としている。 現在までのところ、(1)の調査課題に関しては、新たな調査協力者を得られずにいるなど、調査遂行上の困難も生じているが、すでに一定のデータは集めることができており、分析・知見の整理作業に取り組んでいる段階にある。その一部は学会発表として成果発表してきた。今後は学術論文としての発表する予定であり、執筆を進めている。 以上の調査研究の進展を踏まえて、学会発表や学術論文執筆を遂行することができており、社会情勢上、一部の調査の実現が困難になってしまっている側面はあるものの、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の拡大状況の影響を受けて、予定していた対象者へのインタビュー調査が延期されたことで、研究成果の取りまとめ作業を行う時期が当初計画よりも遅くならざるをえなかった。 今後は当初計画にしたがい、国内での成果発表に加えて国際的にも研究成果を発表するべく準備を進める。その必要経費として次年度使用額を使用する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行等の社会状況の影響を受けたことで、インタビュー調査を必須とする本調査研究の計画には少なからぬ変更が生じた。 社会情勢の変化にともない、当初予定よりは長期間を要したものの、調査の内容自体は概ね予定通りに推敲することができているが、結果的に研究の取りまとめ作業に入る時期も後ろ倒しせざるをえなかったため、そうした作業のための必要経費、および、成果発表に係る経費の使用時期に遅れが生じた。 以上を踏まえて、次年度使用額は、研究課題の完了に向けて、継続調査、研究の取りまとめ、成果発表に係る経費として使用する。
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