2021 Fiscal Year Research-status Report
保育実践における規範に関する検討:園や保育者の保育観に着目して
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21K20262
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
辻谷 真知子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90906265)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 規範 / 保育観 / 共有 / グループインタビュー / 安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育・幼児教育施設(以下「園」)における規範(きまり、習慣、ルール、約束等)に着目し、それらに関する保育者の実践や考えについて園内で共有するための視点や共有のプロセスについて明らかにすることである。当該年度での調査として、具体的な禁止や制限事項を手がかりとして個人の考えの傾向および保育者間での考えの可視化のプロセスを明らかにするため、同一の園での個人インタビューおよびグループインタビューを計画した。2022年2月までに3園18名の保育者の協力により調査を実施し、現在はインタビューデータをもとに分析を行なっている。分析では特に園のきまりに関する保育者の判断や迷いの要因・背景に着目した。個人の語りからは、子どもの実態のほか、既にある環境や園としての理念、他の保育者との考えの相違も、きまりに関する判断のあり方や迷いに関連していることが示唆された。またグループインタビューでは、特に個人の語りにおいて他の保育者との相違が挙げられた具体的な内容を手がかりにすることで、子どもへの対応の共有とともに、園内での価値観として一致する内容と、保育者個人による多様性がある内容とが可視化された。グループインタビューに関しては多様な園の状況を想定してさらに異なる園での調査が必要と考えられる。 また、調査と合わせ、2019年に実施した質問紙調査の分析を進め、規範に関する保育者の迷いや悩みが子どもだけでなく他の保育者や保護者の考えとの関連でも生じていること、ルールに言及する子どもへの保育者の捉え方の傾向について明らかにした(学会発表を行なった)。加えて、安全に関するきまりと関連の深い「けが」についての捉え方についての回答の分析から、保育者の経験年数や在園児の年齢(3歳未満児在籍有無)との関連が見られることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の調査として、当初の予定通り個人よびグループでのインタビュー調査を実施することができた。ただし感染対策等により主にオンラインおよび園敷地外でのインタビュー調査を行ったため、園の実態を十分に踏まえた考察をするには慎重な検討が必要である。また協力者数としては、個人の語りについては分析に必要となる十分な多様性が得られていると判断するが、園の特徴を踏まえた分析には、3園よりも数を増やしての調査が必要と考える。当初目的としていた、研修シートの作成に関しても、現時点でのデータでは作成に至らないと考えており、追加での調査を実施した上での作成を検討している。 また成果報告に関しては諸事情により渡航が困難であるため国際学会での発表は見送ることとしたが、国内学会において上記分析の報告を予定している。そのほか当該年度には、過去の調査データに基づき、学会発表および論文執筆を概ね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として以下3点を予定している。第一に、これまでに得られた個人インタビュー調査のデータに基づき、保育でのきまりに関する判断のあり方や迷いに関連する事柄を明らかにし、研究成果として報告するとともに協力園へ報告書を郵送する。第二に、実際の保育場面に基づくインタビュー調査を実施する。具体的には、園で子どもの遊びの場面を観察し、実際に行われている遊びや子ども同 士でやりとりされる規範について記録する。そのデータをもとに、同じ園で保育者へのグループインタビューを実施する。記録した事例および子どもが示した具体的な園の規範を提示し、子どもへの伝え方や子どもへの願いおよび理由について問う。同時にテーマを絞らない自由な協 議も実施する。 第三に、上記の調査およびこれまでの分析報告をもとに研修シートを作成し、インタビュー調査の協力園にて使用した上で、2019年の質問紙調査協力園へ配布して任意のアンケートを行い、検証や改良を進める。
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Research Products
(5 results)