2021 Fiscal Year Research-status Report
The Study of Practices to Prevent "That Prospective Teachers Leave" in Teacher Education in the USA
Project/Area Number |
21K20275
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
太田 知実 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (50909760)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 教員志望離れ / 青年期教育 / 志望者支援 / 米国教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国教員養成で、教員志望離れを抑止すべく、教員志望者に厳しく断罪的に向き合うのではなく、彼らを共感的・受容的に支援する実践・制度が模索・検討される状況に焦点化し、その存立要件を解明することを目的とする。 本年度は、そうした事例のうち、ボール州立大学における「地域実習基盤型」実践に焦点化し、その調査・分析・検討を行った。第一に、同実践に関する資料・書籍・論文を入手し、その解析・分析を行い、研究論文として成果をまとめることができた。そこでは、教員志望者がどのようなメカニズムでいかなる苦悩・葛藤を抱えるか、その緩和をどう支援できるか、示唆を得られた点が大きな成果である。第二に、新型コロナウイルス感染拡大により、渡米調査はできなかったが、その代替措置として、同実践を主導した大学教員らに、ビデオ会議システムでのインタビュー調査を実施した。同実践の導入経緯・発展過程や彼らの学生支援に対する信念・理念などを聞きとり、一連の実践の導入・実施・成功を支える要件を考察するための貴重な情報提供を受けた。 以上の作業・検討から、教員離れ抑止に資する米国の動向を検討する際には、次の二点への焦点化・追加考察が必要になると明らかになった。第一に、学生が「マジョリティゆえの被抑圧感」を抱く局面への焦点化である。わが国でも社会・学校で優位に置かれがちな学生が教員を目指す傾向にあり、彼らが多様化する児童生徒にどう向き合えるかが問われる現在、重要な示唆を得られる可能性が高い。第二に、学生を支援する側の理念・信念への焦点化である。一連の動向は、支援者側の学生への丁寧な関わりに支えられるところが大きいと見えてきた。どのようにして、そうした働きかけが可能になるのか、それは支援者側にとっていかなる意味をもつのか。これらは、わが国の教員離れ抑止にも重要な知見になりうるため、今後、丁寧な検証作業を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はまず、研究活動スタート支援の趣旨に即して、教育学に関する基礎的・基本的文献を購入し、教育学研究を進める環境を整え始めることができている。次に、ボール州立大学における「地域実習基盤型」実践を対象として研究論文を発表することができた。これは、昨今の米国教員養成の最新動向とも言え、わが国の実態に対しても重要な示唆を見出すことができた。さらに、同実践を主導する大学教員らがビデオ会議システムでの調査を快諾してくれ、貴重な情報提供を受けられた点は本研究にとって重要であった。この情報提供により、単に、実態を知るのみならず、今後の研究にとって重要な視点を見出すことができた。これらの点は、研究が順調に進んでいる点である。 他方、未だにコロナ禍の終息が見えず、渡米調査を実行することはできておらず、大学教員以外への聞き取り調査はかなっていない。以上の理由により、本年度の収穫は大きかったとはいえ、当初の計画通りに研究が進んだとはいえず、研究の進捗としてはやや遅れていると言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、これまでの研究作業で得られた知見をもとに、さらに資料を解析し、成果報告に向けた作業を進めること、可能であれば他事例について追加調査を行うことである。 第一に、地域実習基盤型の事例について、インタビュー調査で得られた知見については十分に解析できていないため、それを対象として考察を深め、論文化を進める。その際には、従来の調査で得た着眼点が、教育学の分析枠組・視点をどのように発展しうるかを検討する。第二に、他の候補事例として、教職教養基盤型と教科教育基盤型の実践についても調査ができるように試みる。未だに感染症の終息が見えないため、当面は引き続き、文献収集・解析・検討を行う。渡米調査ができれば実施するが、できない場合は、当該実践を主導する大学教員にメール等で連絡を取り、現在の実施状況について資料提供を依頼するほか、実践の関係者を紹介してもらい、ビデオ会議システムを用いてインタビュー調査を実施できるよう調整を進める。今年度が最終年度となるため、得られた成果をもとに、論文化を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で渡米調査ができず、渡航費がかからなかったことが、使用金額が少なくなった主たる要因である。今年度は、可能であれば渡米調査を実施したいが、今のところ実地調査が難しく遠隔での調査が予想されるため、ビデオ会議システムでの調査をよりスムーズに行えるよう、パソコンや周辺機器(wi-fi、カメラ等)の設備を整える。また、実地調査の代替策として、関連する英語雑誌の論文や日本の書籍等を購入し、文献の収集・解析・検討を進めることとする。
|