2022 Fiscal Year Research-status Report
The Study of Practices to Prevent "That Prospective Teachers Leave" in Teacher Education in the USA
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21K20275
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
太田 知実 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (50909760)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は米国教員養成で、教員志望離れを抑止すべく、教員志望者に厳しく断罪的に向き合うのではなく、彼らを共感的・受容的に支援する実践・制度が模索・検討される状況に焦点化し、その存立要件を解明することを目的とする。 本年度は、以前より行っていた渡航調査・文献調査の成果を改めて整理・分析し、学位論文として成果をまとめることに重点を置いた。 前提として、米国では人種問題を背景として、教職志望学生の教員離れという実態に直面していることが確認された。そうした教員離れを抑止するための方策として、教科教育基盤型のクイーンズカレッジや地域実習基盤型のボール州立大学の実践では、どのように志望者を支援しているのかを検討した。 検討の結果、教職志望学生は白人として、社会的にマジョリティであるからこそ、人種問題への向き合いに際して、恐れや不安などの被抑圧感を抱かざるを得ないことを明らかにした。これまでの教員養成担当者は、この被抑圧感を人種問題への認識の不足と捉え、学生に反省と修正を迫ってきたが、それでは事態は解決してこなかった。そうではなく、この被抑圧感は、学生が人種問題をめぐる認識を修正し始めた出発点と捉え、教員養成担当者はその緩和を支援することが重要だと考え方が変更されて、学生への支援的な試みが始められていることを明らかにした。昨今、わが国でも教員離れが加速している。他方では、教職志望学生に社会的マイノリティへの共感的理解を求める風潮が強まっている。これまで両者は関連付けられていなかった。だが本研究で明らかにした米国の動向を踏まえれば、社会的マイノリティへの理解の過程をより丁寧に支援することで、わが国の教員離れ抑止につながる可能性があることを指摘した。以上の成果を学位論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、これまでの調査結果の分析・考察を深め、学位論文としてまとめた点で、大きな成果があったと考える。他方、コロナ禍が続いており、海外への人の移動が制限されたため、渡航調査を行うことができなかった。そのために、標記の進捗状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変更され、海外への移動の制限が制度的にも社会的にも緩やかになることが予測される。そのため今後の研究としては、これまで調査が十分にはできていなかった地域実習基盤型の教員養成実践について実地調査を行うことが挙げられる。そこでは、教員養成を担当する大学教員や地域組織のスタッフにヒアリング調査を行い、実践を行う上で工夫したことや困難だったことについて調査を行う。そして、教職志望学生への支援的な教員養成実践・制度の成立要件について、より具体的に明らかにすることを目指す。上記の研究作業に取り組みながら、学会発表および論文化を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が続き、海外への人の移動が制限されたため、渡航調査を行うことができなかったことが最大の理由である。新型コロナウィルスの感染法上の分類が変更され、渡航調査への制限が緩まると予想されるため、次年度に渡航調査を行い、資料収集・分析を行う予定である。また研究成果については、学会発表を行い、研究論文として成果をまとめる予定である。
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