2022 Fiscal Year Annual Research Report
「種の論理」から「市民主義」の教育思想へ:田邊元と久野収の教育論に着目して
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21K20279
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Research Institution | Yamanashi Gakuin Junior College |
Principal Investigator |
川上 英明 山梨学院短期大学, その他部局等, 講師(移行) (40910469)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 久野収 / 田邊元 / 種の論理 / 市民主義 / 京都学派教育学 / 戦後教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、研究計画書で設定した2つの研究軸についての解明を進め、それぞれについて、各種学会で研究発表を行ったり、その研究に付随した内容で、論文や書評といった成果を刊行することができた。 (1)久野収による「種の論理」批判については、2022年10月22日の教育哲学会第65回大会(於慶応義塾大学)において、「種の論理から市民主義の教育思想へ:久野収による田邊元への批判に着目して」というタイトルで研究発表を行った。これにより、久野の「市民主義」という立場の根拠のひとつに、田邊元の種の論理に対する批判があったということを明らかにし、学会員からの意見などをもとに、さらなる探究のための視点を持つことができた。(2)久野の教育思想と市民主義との関係性の解明については、2022年8月24日の日本教育学会第81回大会(於広島大学、オンライン発表)において、「市民主義の教育思想:久野収における教育と個人主義の交叉」というタイトルで研究発表を行った。これにより、久野がいわゆる「戦後教育学」に接近しつつも、一方では日教組と軋轢を生んでいたことなどを明らかにすることができた。これら(1)(2)の内容については、現在、活字化を目指しているところである。 また、(2)から派生して、久野が岩波講座『現代教育学』において展開した道徳教育論に着目し、そこから、彼における〈教育と政治〉の関係性をめぐって考察した論文を刊行した。ここでは、久野の教育論と、勝田守一や無着成恭、羽仁進などの人物の言説との関係を明らかにすることで、戦後教育学の広がりと重なりを見出すことができた。これらは、本研究課題の研究遂行全体の過程において、研究の視野が大きくなったことのあらわれである。
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