2021 Fiscal Year Research-status Report
何%からが「おおぜい」か?: 記述的規範の閾値を特定する
Project/Area Number |
21K20295
|
Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
尾崎 拓 関西福祉科学大学, 心理科学部, 講師 (60909406)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 社会心理学 / 規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が取り扱うのは、記述的規範という社会規範の一種である。記述的規範は、「多数の他者がその行動をとっている」という情報にもとづく社会規範であり、人間の多様な行動に影響を及ぼすことが先行研究で明らかになっている。この「多数の他者」の情報は、先行研究では割合で示されることが多く、本研究ではその閾値を特定することを目的としている。
本年度はインターネット調査を実施し、閾値を特定するために開発した「無意味図案への名づけ課題」を用いて閾値を推定することを目指した。200名が参加者として参加し、さまざまな割合の他者の動向の情報のもと、参加者の判断が他者の動向に影響されるか否かを測定した。得られたデータを項目反応理論を用いて分析したところ、参加者ごとに記述的規範への感受性 (どの程度多くの割合の他者がいると規範に影響されるかどうか) を推定することができ、記述的規範への感受性の個人差が存在することが明らかにされた。また、他者の割合の影響力の大きさを推定することもできた。他者の影響力の大きさは、他者の割合の大きさそのものと強く相関することがわかった。これらを総合すると、本研究では記述的規範の閾値は54%と推定された。ただし、同調志向についての既存の尺度と記述的規範の感受性の相関は低く、本研究で用いた課題の尺度としての妥当性はまだ担保されていない。また、時間的な安定性などの信頼性についての指標も収集が不十分であるため、引き続きこの課題を用いて検討を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記述的規範の閾値を推定するという目的はおおむね達成されたから。ただし、限定されたサンプルによる結果であり、またその信頼性と妥当性についての検証がさらに必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で使用した「名づけ課題」を使い、多様なサンプルに対して調査を継続する。他尺度との比較を通じて妥当性を検証するとともに、信頼性を高める工夫を行い、尺度として確立できるかどうか検討する。
|
Causes of Carryover |
多様なサンプルを収集してインターネット調査を実施する予定であったが、調査会社の選定に時間がかかったため、次年度に繰り越して使用することとした。本年度に改めてインターネット調査を実施する計画である。
|