2021 Fiscal Year Research-status Report
仮想接触アプローチが対外集団態度変容へ及ぼす効果とその応用探索
Project/Area Number |
21K20298
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
胡 安チイ 茨城大学, 全学教育機構, 助教 (00909731)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 仮想接触 / 対外集団態度 / 偏見 / 外集団 / 接触理論 / 対外集団不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
仮想接触理論が直接外集団と接触をせずとも,外集団成員との友好的な接触を想像することで,外集団への態度を好転させ,偏見が軽減できるアプローチであることは広く知られている。申請者はこれまでの研究において,日本人の文化的背景に配慮した仮想接触シナリオの作成に成功している。本年度では,新たな心理学的理論と手法を用い,日本文化背景に適する新たな仮想接触シナリオを作成し充実させることで,対外集団態度の好転に効果的な仮想接触アプローチを開発し,その持続性について検討することを目的とした。具体的には,まず既に効果が確立された仮想接触シナリオを参考に,さらに日本文化背景に適した仮想接触シナリオを数種類作成し,より効果的な仮想接触アプローチの開発を行った。結果的に,日本の文化背景に適したシナリオを3種類確立し,仮想接触シナリオを充実させることができた。次に, 仮想接触アプローチが対外集団態度の好転に与える影響と持続効果を検討した。80名の日本人を実験参加者とし,仮想接触アプローチ 実施群と統制群に分け,実施群では,繰り返し内集団成員が外集団成員と友好的な交流をしているシナリオを読み想像させた。統制群では内集団同士が交流している状況を想像させた。また,実施前,実施直後,1週間後,1ヶ月後の4段階において,各群参加者の対外集団不安,対外集団評価,外集団に対する自己開示と直接接触意欲などに与える影響と持続性を検討した。これらの結果から,仮想接触アプローチが日本の文化的背景において適応可能であり,外集団に対する対外集団態度を改善することが明らかとなった。さらに,複数種類の仮想接触アプローチを実施することによって,対外集団態度を改善し,偏見を軽減させる上である程度の持続可能性を持っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では2年間の間に仮想接触アプローチの開発, その影響の持続効果の検討, 直接経験に与える影響の検討, そして教育現場における仮想接触アプローチの応用探索を実施する予定である。本年度の研究では, 当初予定していた仮想接触アプローチの開発およびその効果の持続性に関する検討を行った。その結果, 仮想接触アプローチの種類を充実させ, 複数回実施することによって,ある程度の持続可能性があることが示唆された。そのため,本研究課題の進捗状況は概ね予定計画の通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では仮想接触仮説の理論的枠組みを支持する結果を示したが,仮想接触アプローチが外集団との直接接触時においても,効果的であるかどうかに関しては,まだ検討されていない。今後は,近い将来に外集団と接触する機会がある人やオンライン留学を予定している日本人を実験対象とし,仮想接触アプローチの応用可能性を検討する。具体的には,まずは留学前に全員の対外集団態度を測定する。次に,仮想接触アプローチを行う実験群とそうでない統制群に分ける。その後,留学先及び帰国後に両群の対外集団態度の変容,外集団との直接接触意欲と自信の向上,偏見の軽減への寄与等を定量的に測定・検証する。 また国際教育などの教育現場における仮想接触アプローチの効果を実証し,心理学的トレーニングとして発展させ,異文化間の衝突緩和のための実践的な対策としての応用性を探索する。
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Causes of Carryover |
国際学会への参加のための旅費として申請していたが, コロナ感染症の影響により参加がオンラインになったため, 次年度使用額が生じた。次年度では, アメリカで行われる国際学会での研究発表および参加を予定している。
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