2021 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症者の反復刺激に対する順応機能から捉える「慣れない」の神経基盤
Project/Area Number |
21K20311
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
糸井 千尋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (30912878)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 順応 / 錯聴 / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)の「慣れない」現象の神経基盤を解明するための足がかりとなる知見を得ることである。本研究では,ASDの「慣れない」現象を感覚刺激の反復提示に対する「知覚の変動性が大きすぎる」という観点からの解明を目指す。先行研究では,聴覚的に提示された単語の反復提示により聞こえ方が変化する錯聴の一つである反復単語変形効果の知覚内容を検討し,ASD者は同じ単語の反復提示に対し,より大きな変化のある語を知覚することを明らかにした。しかしながら,その神経メカニズムは明らかでない。そこで,fMRIを用いて,反復刺激に対して大きな変化を知覚するASD者の特徴から「慣れない」神経メカニズムを明らかにする。 しかし,「慣れない」現象は,神経反応の違いだけでなく,主観的な「慣れなさ」の反映である可能性もある。つまり,感覚情報処理の困難に対する主観的な評価を「慣れない」と表現しているのかもしれない。ASD者の感覚情報処理に関する先行研究は,外受容感覚を中心に検討されてきたが,近年,ASD者の非典型的な内受容感覚情報処理にも注目されており,内受容感覚情報処理に関する困難に関する質問紙も開発されている。しかし,本邦ではASD者の内受容感覚処理に関する非典型性を明らかにするための自己記入式質問紙が存在していない。 そこで,「慣れない」神経メカニズムを明らかにするためのfMRI実験の前段階として,主観的な「内受容・外受容感覚処理の困難さ」と「慣れない」の関連性を検討する必要があると考え,内受容感覚に関する質問紙の作成を行った。次に,「慣れない」という現象について,交感神経指標を用いて,音刺激に対する生理的な反応を検討した。また,雑音(ホワイトノイズ)が背景に提示された場合でも,反復単語変形効果が見られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍での実験参加者を募ることの困難さからfMRI実験を進めることができていない。 しかし,「慣れない」を主観的に検討するための内受容感覚に関する質問紙の作成や,音刺激に対する交感神経反応の測定,背景ノイズ提示時の反復単語変形効果刺激聴取実験等の,fMRI実験を行う前段階の準備を着実に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の所属機関の異動により,fMRI実験の実施場所を昭和大学附属発達障害医療研究所に変更し,研究の遂行を目指す。昭和大学附属発達障害医療研究所では, 聴覚刺激を用いたfMRI実験の研究実績があることから,本実験計画をスムーズに実行することが可能である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,学会がオンライン開催になったため旅費が発生しなかったこと,実験の実施困難な期間が存在しており,実験参加者の謝金が想定よりも少なくなったことが,次年度使用額が生じた理由である。 使用計画として,2022年度は複数の学会の参加のため旅費の使用や,実験参加者への人件費・謝金の使用が見込まれている。
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