2021 Fiscal Year Research-status Report
Design and analysis of a structure-preserving scheme for the Liu-Wu model with conservation laws both in bulk and on the boundary
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21K20314
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥村 真善美 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (80913045)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 数値解析 / 構造保存数値解法 / Cahn-Hilliard方程式 / 力学的境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
力学的境界条件下の偏微分方程式の境界値問題は、従来の境界条件下の問題と異なり、境界上でも力学系を考えることになる。そのため、力学的境界条件下の問題に対して、離散変分導関数法に基づく構造保存スキームを構成する場合、従来のような領域内部の変分計算だけでなく、境界上の保存量、あるいは散逸量にも注目し、境界での変分計算も通じて適切な離散境界条件を導出することで、その構造保存スキームを構成できると期待される。実際に、当該年度には、相分離現象を記述する、放物型偏微分方程式のCahn-Hilliard方程式系で、近年Liu-Wu により提唱された新たな力学的境界条件下のモデルに対して、境界での変分計算も行うことで適切な離散境界条件を導出し、離散変分導関数法に基づく構造保存スキームを空間二次元で直交格子の場合に構成した。 空間多次元の力学的境界条件下の問題では、境界での拡散の役割を果たす、ラプラス-ベルトラミ作用素の項が境界条件内に現れるが、空間領域が長方形領域で、上下・左右の境界のうち、いずれか一方の境界には周期境界条件を課した場合、そのラプラス-ベルトラミの項はシンプルな形で書き下せる。そこで、本研究ではその設定のもとでまずは構造保存スキームを構成した。なお、Liu-Wuモデルは、領域内部と境界上の積分量がそれぞれで保存するという、特徴的な保存則を持ち、また、このモデルには領域内部のエネルギーと境界のエネルギーの和が減衰するという、総エネルギー散逸則が成り立つが、これら三つの構造を全て離散的に再現する構造保存スキームを構成した。 また、数値計算の計算コストの削減に向けて、まずは空間一次元の比較的単純な、線形の力学的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対し、線形の構造保存スキームや、スタッガード格子を用いて空間の分点の数を減らした構造保存スキームも構成し、その可解性について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究当初の予定通り、Liu-Wuモデルに対し、これまでの研究成果で得られていた空間一次元の構造保存スキーム構成法を今回の空間二次元の場合に拡張することで、このモデルがもつ、領域内部と境界での各保存則、そして、総エネルギー散逸則を全て再現する構造保存スキームを構成することができた。また、数値計算を通じ、数値的にもそれらの構造が離散的に再現されていることが確認できている。その点では進捗状況は及第点ではあるが、構成した構造保存スキームの理論解析の部分で遅れが見られる。実際、スキームの可解性や誤差評価を論じる上で重要となる、スキームの解のL∞-有界性の証明において、非線形項の評価が複雑になっており、解のL∞-有界性の結果がまだ得られていない。以上を鑑みると、全体としては「やや遅れている」という評価が妥当であるとみている。
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Strategy for Future Research Activity |
提案スキームの解のL∞-有界性の証明が最重要課題であることから、まずはこれに取り組むとともに、コロナ禍の情勢を鑑みながら、対面式での打ち合わせの機会を増やしつつ、Zoom等によるWebinar会議を積極的に利用して有力な研究者との交流を増やし、課題解決の方策を探る。 また、本研究で対象とする問題は空間多次元の問題であることから、より細かいメッシュで数値計算を行う場合には現在の提案スキームでは計算時間が非常にかかってしまっている。そこで、今回の問題に対しても、時間ステップを余剰に導入し、スキームの非線形性を弱める線形多段階化と呼ばれる手法を用いることで、線形陰的な離散変分導関数法スキームも構成し、計算コストの削減にも取り組む。 そして、次年度が研究計画期間の最終年度にあたることから、提案スキームの解のL∞-有界性、可解性といった理論解析の結果を得て、まとまった結果を論文および学会等で発表することが目標となる。
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Causes of Carryover |
本研究の開始当初では、国内外の有力な研究者との研究交流を通じて、本研究の分析および評価を行うことを計画していた。しかしながら、コロナ禍で課題の進捗が著しく阻害され、対面式での打ち合わせや、渡航の全面禁止により海外研究者との交流が困難となり、主に旅費の予算を執行することができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。そこで、旅費および図書購入費や雑費の残額として398,552円を翌年度に繰り越す。
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Research Products
(7 results)