2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K20321
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三宅 庸仁 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (00910655)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 高階放物型方程式 / 初期値問題 / 本質的正値解 / 漸近解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高階放物型方程式の解析を困難とする要因の一つに, 「正値性保存則の崩壊」が挙げられる. 特に, 多重調和熱方程式に対する初期値問題の解は, 初期値が非負値であったとしても一般に正値関数となるとは限らない. 実際, コンパクトサポートを持つ滑らかな非負値関数を初期値とする解は, 必ず符号変化することが知られている. これは, 二階放物型方程式の代表例の一つである熱方程式に対する初期値問題では起こらない現象である. 一方で, 空間全体で一定の正の値を取るような定数関数を初期値とする場合, 対応する解も同様の正値な定数関数となるため, 特に正値解となる. 以上のことから, 空間遠方で減衰が遅い場合, 多重調和熱方程式に対する初期値問題の解は空間大域的に正値となることが期待される. 実際自身のこれまでの研究により, 斉次球対称関数を初期値とする場合, 対応する解が時空間大域的に正値な関数となるか否か分かれる閾値が存在することが判明している. 本研究では, 上述の二階放物型方程式と高階放物型方程式の違いをさらに追求し, より一般の初期値に対する解の符号の性質を見出すことを目的として解析を行なった. 具体的には, 上述の結果をより一般化することを目指し, 多重調和熱方程式に対する初期値問題の解の符号に対する, 初期値の空間遠方での減衰速度の影響を考察した. これにより, 同問題の解が空間大域的かつ時間終局的に正値となるか否か分かれるような, 初期値の減衰速度における閾値が存在することを示した. ここで得られている閾値は, 上述の先行研究において得られている閾値に対応している. さらに, ここで得られた研究成果を半線形多重調和熱方程式に対する初期値問題に応用し, 同様の性質を有する時間大域解の構成に成功している.
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