2021 Fiscal Year Research-status Report
Numerical study of Navier-Stokes turbulence in the whole space
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21K20322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木谷 耕司 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (70211787)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 乱流 / 周期境界条件 / 全空間 / 亜粘性散逸項 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、全空間におけるNavier-Stokes乱流の性質を次の2点に注意して研究することである。(1) 数値解析的手法により、流れ場の相似則を周期境界条件下の結果と直接的に対比する。(2) 自己相似性に着目して、その性質を理論的に解析する。境界を持たない流れの基礎研究に関して、これまで数多くの数値解析的研究がなされてきたが、そのほとんどは周期境界条件下によるものである。他方、全空間・全平面における流れの数学解析的研究では、それらの評価法が異なる。ここでは、2次元流・3次元流について物理的、数学的に興味がある問題を取り上げ、直接数値計算により境界条件による相違を吟味する。
数値解析的な側面では、2次元Navier-Stokes方程式を全平面で直接数値計算を行うためのプログラムを構築した。簡単な初期条件を用いた流れの数値計算を始めていて、全平面における流れにおいて微細構造が現れる乱流を実現することができるようになった。
理論的解析的には、自己相似解の研究を進めた。特に、亜粘性をもつ流体方程式の詳細な数学解析を流体方程式について行った。亜粘性散逸項をもつ Burgers方程式の自己相似プロファイルを決定する方程式を導出した。これは、この系が力学系として可積分性を持つ事を示している。また、その最低次の近似における漸近解の具体形を導いた。3次元流に関しては、Navier-Stokes 方程式の相似解の第一近似(すなわち線形化解)の具体形を導出し、その空間構造を特徴づけた。また、ニュートン粘性および亜粘性散逸項を伴う2次元流体方程式(Navier-Stokes 方程式および準地衡近似方程式)の自己相似解の解析も行った。これらの結果のうち多くは、2つの研究集会において報告済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費によって新規に導入したデスクトップ型ワークステーションは、実際の2次元問題の数値計算に耐えられる性能を持つものである。これにより本研究課題はほぼ計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
全空間の流れでは実際にどのような相似則が実現するのだろうか、という問題を考える。圧力項を数値解析的に評価するために効率のよいポアソンソルバーを用いることで、大きな領域内で局在した初期条件から発展する Navier-Stokes 流を差分法で計算することが可能になった。次の段階は、2次元周期境界条件下における等価の初期値を用いて、擬スペクトル法によって Navier-Stokes方程式を解き、上述の計算結果と比較することである。この方法によって、周期境界条件下でのポアソン和に付随する、周期鏡像の影響を除去できるため、境界条件の解挙動に対する影響を吟味できる。特に、エネルギースペクトル、エンストロフィー減衰則、物理空間における渦構造などの差異に注目する。逆カスケードについても、同様な手法による取扱いを行う。また、3次元全空間におけるNavier-Stokes方程式の数値計算プログラムを構築し、やはり周期条件下の流れと比較することでエネルギーカスケード過程にまつわる相似則への影響を調べる。
理論解析的には、亜粘性散逸項をもつ「修正Navier-Stokes方程式」が、爆発する自己相似解をもつか否かを考察する。予想は否定的であるが、証明は知られていない。そこで自己相似プロファイルが満足すべき方程式が非自明解を持つか否かを、反復法に基づく数値計算によって探索する。
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Causes of Carryover |
感染症対策として、予定していた国際研究集会への対面参加をオンライン参加に切り替えたことに伴い、旅費の使用が繰り越しとなったため。
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