Outline of Annual Research Achievements |
確率過程の熱核及びGreen函数の一様なL^p可積分性に相当するL^p-Kato性, また, それらの緊密なL^p可積分性に相当するL^p-Green-tight性は, 独立なp本の確率過程の軌跡が交差する条件や交差した量を記述する交差測度(intersection measure)の解析に本質的な性質であると考えられている. また, L^p-Kato性は確率過程に対応するDirichlet空間のL^2p空間へのSobolev型埋め込み定理と, L^p-Green-tight性はL^2p空間へのRellich-Kondrachov型コンパクト埋め込み定理との関連性が本研究者により得られていた. 本研究課題ではこの結果の様々な展開を試みた. 2021, 2022年度ではrandom interlacement(RI)に関する研究を2021年度に引き続き行った. p本の独立なマルコフ過程の交差測度や,p=1の場合に相当する滞在測度は時間tまでの情報によるために定常性がない一方で, RIは時間無限大までの軌跡をランダムにサンプルする確率場であるため定常性を持つ. 2021年度ではRIをDirichlet空間の一般論の視点から考察し, 反射Dirichlet空間や周遊理論との関係性を調べ, 2022年度では具体例としてNewton容量や対数容量およびそれらの平衡測度を, それぞれ対応する反射マルコフ過程の滞在確率および到達分布で表現することができた. 新規性のある例として, 半平面上のレヴナー微分方程式を構成する際に現れる半平面容量についても同様な結果を得た. 2023年度では, p=2の場合の交差測度について交差する点が特に集まっている場所の解析がなされた先行研究[Dembo, Pres, Rosen, Zeitouni (2002)]を基に, p→∞, すなわち無限個の確率過程の軌跡の交差について対応する交差測度の同定をOrlicz-Sobolev埋蔵定理の観点から試みた. 該当年度に行った手法では, 交差測度のサポートが広すぎる, 先行研究と異なり高次のモーメントが計算できない, といった難点が生じたことから今後も改善手法を模索し研究を継続する必要がある.
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