2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on singular Hermitian metrics via L2 theoretic methods and their applications to algebraic geometry
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21K20336
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
稲山 貴大 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (00907404)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 特異エルミート計量 / 乗数イデアル層 / L2評価式 / 中野正値性 / Griffiths正値性 / 正則ベクトル束 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、HormanderのL2評価や大沢竹腰のL2拡張定理等のL2理論に基づいて正則ベクトル束の特異エルミート計量(以下、特異計量)を研究することにある。本年度は特に乗数イデアル層やその高階版の層について研究した。 多重劣調和関数に付随する乗数イデアル層とは、その関数をウェイトとするL2ノルムに関して局所二乗可積分となる正則関数の芽のなす層のことである。乗数イデアル層は複素幾何学において重要な研究対象だと認識されており、Nadelによってその連接性が証明されている。 自然な一般化として、ベクトル束の特異計量に付随する高階版の乗数イデアル層に対応する層というものが考えられ、同様にその連接性が問題になってくる。特異計量がある意味で中野正値である場合、対応する層が連接になることは筆者及び筆者と細野元気氏との共同研究によって示されている。一方、特異計量がGriffiths正値性という中野正値性より真に弱い性質しか満たさない場合は、自明な場合を除いてその対応する層の連接性は知られていない。 本年度筆者は、Griffith正値な特異計量の特異点が孤立している場合、対応する層が連接になることを証明した。証明の大まかな方針はNadelによるL2評価を使った証明をベースとしたものだが、計量がGriffiths正値性しか持っていないとL2評価は成り立たないというベクトル束固有の問題が生じる。そこで筆者は、考えている特異計量に行列式束の特異計量をかけることでL2評価式を得る、いわゆる特異計量版のDemailly--Skodaの定理を証明することで、件の定理を証明することに成功した。また応用として、特異計量が良い対称性を満たせば、自然に特異点が孤立することを観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今まで知られていなかった正則ベクトル束の特異エルミート計量に関する基本的な結果であるため、研究自体は進展している。しかし得られた結果に技術的な条件が付いているので、応用を模索する上で何らかの工夫が必要になってくる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上で得た主定理の代数幾何学への応用を考える。 (2)双対中野正な特異計量について、高階版の乗数イデアル層に対応する層が連接であるかどうか調べる。 (3)通常のヘルマンダー型のL2評価式だけでなく、ツイストされたL2評価式による特徴付けを考えることで、より多種多様な正値性を扱えるようにする。
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Causes of Carryover |
当該年度は新型コロナウイルスの影響で、予定していた研究集会への出張が出来なかった。翌年度に積極的に研究集会に参加することで、旅費として使用する。
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