2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K20351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安井 勇気 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (00846636)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最小単位である単原子での磁気相互作用に対して力の観点からの知見を与えることを目的としている。そのために、基板の磁化方向、吸着原子の種類、吸着原子間の距離に応じた吸着原子の状態変化を調べる。その手段として、走査型トンネル顕微鏡を用いた局所状態密度の計測、および、原子間力顕微鏡を用いた交換力の計測を行う。基板の磁化方向に対して吸着原子の振る舞いの変化を調べるため、場所によって様々な磁化方向をもつものを基板として選定することが重要となる。このようなものとして、らせん構造を持つ磁性体、具体的にはイリジウム上の鉄薄膜のサイクロイド型の磁気構造を利用する。 初年度には、磁性体基板としてのイリジウム上の鉄薄膜試料の作製を行った。超高真空雰囲気下でのイリジウム単結晶基板の清浄化方法、および、鉄原子の蒸着方法を確立した。この試料の低温測定も行っており、試料がらせん形状の磁気構造を持っていることをスピン偏極走査型トンネル顕微鏡を用いて確認した。さらに、吸着原子として、孤立した単原子が必要となる。そのため、コバルト原子の低温蒸着を行い、孤立した単原子としての蒸着ができていることも確認した。 作製した磁性基板において、さまざまな磁場においてスピン偏極走査型トンネル顕微鏡測定をすることにより、鉄原子の磁気構造に変化が現れることを見出した。らせん構造のような複雑な磁気構造は、複数の相互作用の絶妙なバランスにより実現しているため、外部磁場によりこのバランスに変化が生じたと考えられる。本研究で目的とする吸着原子にも影響が及んでいると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製方法は確立しており、液体ヘリウム温度での走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡での測定を開始している。磁場の変化による磁気構造の変化も観測されており、おおむね順調に進展をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
低温蒸着されたコバルト単原子において、基板の磁化方向に対する依存性、コバルト原子間距離に対する依存性をその系統的に調べる。外部磁場によって基板の磁気構造が変化することもわかったので、基板の磁気構造の変化によって吸着原子にも影響があるか追及する。
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Causes of Carryover |
研究計画時にはタングステン単結晶基板を使用する予定であったが、研究室で保有していたイリジウム単結晶基板を使用したためこの購入費用分、次年度使用額が生じた。
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