2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20353
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
江島 輝美 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (70712173)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 魚骨類 / イットリウム / コラーゲン / 軟組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、魚骨類における重希土類元素の濃集メカニズムを解明するために行った。主に、魚骨類の構成組織(軟組織)を用いて、重希土類元素の代表であるYの電離滴定分析およびの吸着実験を行う。これにより、深海底泥に産する魚骨類の硬組織(アパタイト)に本来選択的濃集が認められないはずの重希土類元素の濃集が起こるメカニズムを解明することを目的としている。 初年度は、魚骨類の構成物質であるコラーゲン(軟組織)にYが濃集した可能性があるため電離滴定分析を行った。その結果、コラーゲンとYに反応性が認められた。その後、コラーゲンのYの結合状態を確認するため赤外分光分析を行ったが、ピーク等の重複により明瞭な結果は得られなかった。 次年度は、実際に魚骨類にYを吸着させることで、どのような組織に選択的にYが濃集するかを調べた。魚骨類および比較のための合成アパタイト・沸石族鉱物をそれぞれ3種類の濃度の塩化イットリウム溶液に浸し、常圧から100MPaの圧力を加えた。その結果、合成アパタイトや沸石族では圧力と濃度に依存してYの濃集が確認できたが、魚骨類では圧力と濃度に関係なくYが濃集することが分かった。電子線微小部分分析装置による観察と組成分析の結果、Yの濃集箇所が骨などの硬組織ではなくコラーゲンなどの軟組織である可能性が極めて高いことも分かった。この事実は、魚骨類を構成する軟組織(コラーゲン等)に化学反応でYが濃集したことを示しており、前年度より行っているコラーゲンへのY電離滴定分析の結果と調和的である。しかし、現行の観察方法および解析方法では軟組織中のYの分布や結合状態を解明するためには不十分であるため(軟組織のどのような箇所に濃集したのかが不明であるため)、現在信州大学医学部および岡山大学歯学部のご協力を得て、軟組織・硬い組織の両方を観察することを目指して実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に薬品等の納品の遅れにより大幅に実験計画が遅延したが、本年度は順調に実験計画を遂行できた。ただし、本年度は8月に出産予定であるため、現在の進行状況はやや遅れ気味であるが、出産後にすぐ復帰予定なので、遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度行えなかった観察を中心に行っていきたい。また、妊娠及び出産により実験・分析ができない期間が発生するため、研究協力者の助力を得ながら研究を行っていきたいと考えている。本年度は、妊娠により実験および分析が思い通り進まない可能性があるため、その間は論文執筆に取り組みたいと考えている。また、復帰後にスムーズに研究が行えるよう研究計画を見直し、出産による産休前後でデータの解析やうまくいかなかった実験や分析の解決策を調べる等の時間を設け、後半に追加の実験・分析を行うよう計画を組みなおした。
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Causes of Carryover |
初年度に薬品の納品のため大幅に実験が遅延した。昨年度は、おおむね良好に実験計画を遂行できたが、妊娠のため学会などへの参加が難しかった。このため、まだ当初計画していた実験及び分析・観察が終わっていないのに加え、計画していた研究公表ができていない。次年度は、主にSEMおよびTEM分析による軟組織の観察と魚骨類におけるYの分布とその組織へのYの結合状態を明らかにするための分析および論文公表のための費用に予算を執行する予定である。
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