2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K20353
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
江島 輝美 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (70712173)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | アパタイト / 魚骨類 / イットリウム / 有機組織 / 重希土類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では魚骨類アパタイトにおける重希土類の農集機構の解明を目的として行った。申請者は、魚類起源アパタイトの有機物組織が濃集メカニズムに関係する可能性が高いと考えた。しかし、海洋生物の有機物組織は温度変化で容易に分解するため、現存する試料には元素濃集時の組織が残っていない。このため、現存する試料中の重希土類元素の存在状態や分布を調べるだけでは、濃集メカニズムの全容を解明できない。そこで有機物(フィッシュコラーゲン・ペプチド)への重希土類元素の吸着実験(実験①)、有機物を含有する合成アパタイトへの重希土類元素の吸着実験を行った(実験②)。 実験①では、有機物であるコラーゲンのアミノ基とYに反応性があることを想定して実験を行った。しかし、フィッシュコラーゲンへの吸着実験の結果、Yとの顕著な反応は認められなかった 実験②では、異なる濃度のY溶液に魚骨類の骨(有機物を除去しない状態)を浸して、異なる圧力の元で吸着実験を行った。また、比較のために合成アパタイトおよびゼオライトを用いた。その結果、合成アパタイトでは圧力および溶液濃度、ゼオライトでは溶液濃度が高いほどY濃度が高かった。一方で、魚骨類の骨では、濃度および圧力に関係なくYの吸着が確認された。魚骨類の骨では、魚骨の表面に露出した有機物組織にYが濃集していることがわかった。また、有機物組織の中でもYが高濃度の箇所と低濃度の箇所があり、有機物組織による吸着能力の違いがあることも明らかになった。 上記の2つの実験により、魚骨類の骨においては、有機物組織へYの化学的反応による吸着が認められるが、たんぱく質以外の有機物質がYの濃集機構において重要な役割を果たしていると考えられる。
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