2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of phase space analysis method toward well focused negative ion beam
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21K20357
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
波場 泰昭 日本大学, 生産工学部, 助手 (60908789)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 負イオンビーム / 負イオン源 / 速度分布関数 / 位相空間構造 / ビーム物理 / 集束性 / 発散角 / 核融合発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者は,自然科学研究機構核融合科学研究所の研究開発用負イオン源(NIFS-RNIS)から引き出された単一の負イオンビームに対して位相空間構造(ビーム進行方向に対して垂直方向の位置と速度との関係)の計測を行い,負イオンビームを構成する複数の速度分布成分の分離計測に成功した.それぞれの速度分布関数の全貌が実験的に計測され,それらの含有率の定量評価が可能であることが世界に先駆けて実証された.実験的に取得した負イオンビームの速度分布関数は,ビーム軌道の逆流計算を行うための初期条件を与える.また,それぞれの速度分布成分の含有率は,ビーム加速器系で初段の静電レンズ効果を担うメニスカス(ビーム引出界面)より下流で形成される静電レンズ効果の影響を受けない.故に,ビーム速度分布関数の実験計測と,ビーム軌道の逆流計算等のシミュレーションとを連動した今後の研究によって,それぞれの速度分布成分の起源を明らかにする可能性がある.各成分の起源を解明することは,それらの集束性を制御するパラメータを同定することである.以上の知見について,三つの国際会議(第74回GEC,ITC30,及びISPlasma2020)で報告すると共に,論文“Abundance ratio of multiple velocity distribution components in a single negative ion beamlet produced by a cesium-seeded negative ion source”がオープンアクセス誌として出版された.当該論文(Yasuaki Haba et al 2022 AIP Adv. 12 035223 (2022.03.11))は,Featured Articleに選出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,代表者が所属する日本大学生産工学部リサーチセンターで新たに小型負イオン源及びビームラインを構築し,負イオンビームの速度分布関数を実験的に評価するためのビーム計測器の開発を行う.純水素放電プラズマを生成する小型負イオン源の本体については,従前置かれていた核融合科学研究所から日本大学生産工学部への移設が完了した.現在,ビームライン及びビーム計測器の設計中である.負イオン源内3mTorrかつビームライン0.05mTorrを圧力の仕様として,これを実現するために必要となるロータリーポンプ,ターボ分子ポンプ,及びコンダクタンスバルブを選定した.負イオン生成・引出・加速に用いる直流電源の選定では,フィラメント電源4V-40A,アーク電源80V-30A,バイアス電源3V-15A,引出電源3kV-30mA,加速電源50kV-20mAを仕様とした.ビーム計測器で取得されたビーム位相空間情報(ビーム進行方向に対して垂直方向における位置と速度との関係)を解析するためのコード開発は完了した.新たに開発するビーム計測器の設計に応じて,解析コードの継続的な改良が必要となるが,負イオンビームの速度分布関数の全貌を実験的に評価できることを実証した.本研究で残されている重要な課題は,負イオンビームを構成する複数の速度分布成分の起源を解明することである.この課題を解決する一方策として,表面生成負イオンの生成効率に影響を与えるセシウム添加量とビーム集束性との関係を評価するための実験を立案していた.当該実験は核融合科学研究所で実施が予定されていたが,コロナ禍の影響により2022年度以降に延期となった.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,日本大学生産工学部リサーチセンターで小型負イオン源を完成させる.最初に拡張可能な短いビームライン及び架台の製作を行い,そこに小型負イオン源を接続させて,プラズマ点火を行う.この段階までに水素ガス導入系,冷却系,圧力制御系,排気系を完備する.次いで,ビームライン及び架台を拡張し,併せてビーム計測器をビームラインに取り付けて,ビーム計測を行う.小型負イオン源を用いてビーム計測を行う利点は,大型装置では走査が困難となるパラメータに対して,負イオンビーム集束性の評価が可能となることである.具体的な走査パラメータとしては,(1)負イオン源へのセシウム添加量,(2)電子偏向磁場の配位,(3)ビーム加速器系を構成する電極の幾何構造などが挙げられる.今後の本研究課題の推進方策として,これらのパラメータに対する負イオンビーム集束性の評価を,速度分布関数に基づいて行う.このうち,セシウム添加量の変化に対する負イオンビーム集束性の評価については,延期されている核融合科学研究所での実験においても試みる.当該実験では,表面生成起源の負イオンと体積生成起源の負イオンとを分離したビーム集束性評価を目指す.また,ビーム加速器系を構成する電極の幾何構造の変更・改良については,若手研究(22K14023)の助成を受けて,より円滑に遂行していく.近年,負イオンビーム引出界面におけるビーム軌道の数値計算が数件報告されているため,本研究課題で得られた実験結果は数値計算との比較や連携を果たすことが期待される.
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Causes of Carryover |
本研究課題に関する研究成果を国際会議でオンサイトで口頭発表する予定であったが,新型コロナウィルス感染症拡大の影響により,オンライン参加に制限された.これに伴い,予定していた発表者が移動に要する旅費及び会議期間中の宿泊費の計上を取り下げたため.次年度使用額については,次年度開催される学会の参加費として使用する計画である.
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Research Products
(4 results)