2021 Fiscal Year Research-status Report
動的なブラックホールのフォトンスフィアとシャドウの研究
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21K20367
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古賀 泰敬 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (60910891)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ブラックホール / ブラックホールシャドウ / フォトンスフィア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2021年度)の計画は、ヴァイジャ時空(Vaidya spacetime)というブラックホールのモデルのうち、「質量降着によって成長するブラックホール」のケースについて、(1)フォトンサーフェイスの時間発展、(2)シャドウの時間発展、(3)シャドウを形作る光の軌道を調べるものであった。 当初の予定通り(1)-(3)について解析計算・数値計算の双方で明らかにすることができた。特に、フォトンサーフェイスは時空の因果構造という大域的な構造の観点から唯一に決定されることを明らかにした。加えて、局所的構造についても重要な結果が得られており、自らの先行研究で提唱した「不安定フォトンサーフェイス」という概念と一致することも明らかになった。その他関連する概念との比較についても明瞭な結論が得られた。 また、一部の計算ではフォトンサーフェイスの時間発展を解析的に表すことができたのは大きな成果であった。これにより、フォトンサーフェイスの時間発展がブラックホール自体の質量の増加とどのような関係をもつか、定性的に表すことができた。この結果は観測されるシャドウの時間発展が、フォトンサーフェイスやブラックホールとどのように関係しているかについて明確な示唆を与える。また、この際利用した数学的手法は、次年度やさらにその先の研究にも応用可能であり、今後の研究の発展に期待できる。 この研究は安積氏(大阪市大)、木村氏(立教大)、岡林氏(大阪市大)らとの共同研究で、Physical Review D誌への論文掲載が決まった。また、国内の学会では日本物理学会秋季大会など、国際会議ではJGRGにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた研究対象について、調べるべきことは全て調べ、その物理的議論においても明確に結論を出すことができた。また、理論研究におけるブラックホールシャドウの問題設定を、時空の因果構造という観点で再定式化できたのは、計画以上の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により、今後の研究においてもブラックホールシャドウの問題設定は明確にできると期待できる。基本的に、当初の計画通り、Vaidya時空の「重力崩壊で形成されるブラックホール」のケースの研究を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の状況により国内・海外の出張が中止・遠隔開催・または自粛したため、次年度の実施とした。また、世界的な半導体不足により物品の入荷が当該年度中に使用できなかったため、次年度に持ち越した。
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