2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring Axion-like Particles with Core-collapse Supernova Simulations
Project/Area Number |
21K20369
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
森 寛治 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (50910816)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アクシオン / 重力崩壊型超新星爆発 / 恒星進化論 / 宇宙素粒子物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽のおよそ10倍より重い大質量星は、重力崩壊型超新星爆発を起こしその一生を終える。超新星爆発の中心部では極端な高温・高密度環境が実現され、未知の素粒子が生成される可能性もある。そこで本研究では、数値シミュレーションを用いて未知の素粒子アクシオンの超新星内部での生成の様子を調べている。この目的のために、報告者はプラズマ中の温度・密度・組成の関数としてアクシオンの生成・吸収率を計算するプログラムを開発した。このプログラムを超新星爆発のシミュレーション・コードに組み込むことで、アクシオンによる冷却・加熱効果を考慮した1次元超新星モデルを構築した。アクシオンを含まない通常の1次元モデルでは、コア反跳によって生じた衝撃波が停滞し、爆発が失敗してしまうことが知られていた。しかし、報告者の計算によって、質量100 MeV程度のアクシオンを仮定した場合にアクシオンによる加熱が停滞衝撃波を復活させ、超新星爆発を成功させる場合があることを示した。複数のモデルを系統的に調べることで、アクシオンのパラメータ空間において超新星に著しい影響を与える部分を特定した。 また、報告者は重力崩壊寸前の大質量星のコアが十分高い温度に達することに着目し、超新星前兆アクシオンの検出可能性についても議論した。恒星内部で生成されたアクシオンは、星を脱出して星間空間を伝播する過程で磁場と相互作用しガンマ線に変化する。次世代のガンマ線望遠鏡と前兆ニュートリノ観測の連携によって、将来の近傍超新星の親星からアクシオンの情報を得られる可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の成果として、2本の査読付き原著論文が出版されている。とくに、本研究計画の主眼であった超新星爆発コードへのアクシオンの組み込みに成功し、アクシオンの効果をセルフコンシステントに組み込んだ超新星モデルを開発することができた。従来の研究では、超新星モデルからアクシオンの効果が切り離されていたため、超新星ダイナミクスに対するアクシオンの影響を定量的に議論することが困難であった。今回の成果によってこの難点が克服され、アクシオンによる停滞衝撃波の復活を本格的シミュレーションを用いて示すことができた。したがって、現在のところ本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、アクシオンの効果を考慮した1次元超新星モデルを開発することに成功した。そこで、今後はこのモデルを軸対称2次元モデルに拡張することを目指す。超新星からの重力波を予言し、マルチメッセンジャー天文観測と連携するためには、そうした多次元モデルの開発が必要不可欠である。また、これまでに計算した1次元モデルをさらに拡張し、アクシオンのパラメータのグリッドをより細かく設定して計算を進めていく予定である。これによって、超新星爆発の典型的な爆発エネルギーとニッケル質量をともに再現するようなパラメータ領域を特定する。 さらに、これまでに開発したアクシオンの生成を計算するコードを用いて、多様な天体からのアクシオン放射を計算することを予定している。たとえば、恒星内部の磁場によって引き起こされるアクシオン生成や、およそ140太陽質量より重い超大質量星が引き起こす対不安定型超新星に対するアクシオンの影響について研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、国際会議・研究会の多くが延期またはオンライン開催となった。そのため、旅費として使用を予定していた予算を使用することができなかった。パンデミックの今後の状況はいまだ不透明であるが、次年度には移動制限が解除され、再び研究会等が現地開催される可能性があるため、次年度使用額の多くを旅費として使用したいと考えている。
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