2021 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental study of vacuum decay towards the application to cosmology and particle physics
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21K20371
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大下 翔誉 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (50911632)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 真空崩壊 / 重力 / 経路積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの主な研究実績として、(1)ローレンツ経路積分に基づいた真空崩壊の新たな定式化や、(2)Wheeler-deWitt形式に基づいた真空崩壊の定式化が挙げられる。 これまで真空崩壊は定常的な時空の上で虚時間を導入するユークリッド経路積分に基づいていた。より現実的な系で真空崩壊を記述するには、ユークリッド経路積分による定式化を超えることが重要である。(1)では、まず簡易的な系での計算を実行するために、重力が存在しない系かつ真空泡の構造が薄い球殻の運動で記述できる場合を想定し、その真空泡の生成率をローレンツ経路積分で評価した。この経路積分の計算には、Picard-Lefschetz理論を適用した。その結果、ユークリッド経路積分の結果を再現することを見出した。これは、ローレンツ経路積分が真空崩壊の定式化として機能することを示した意義深い例である。 従来の計算法では、量子トンネリングを起こしている領域と起こしていない領域の両方に虚時間を導入し、真空泡の構造を与える解を計算していた。しかし実際にはトンネリングを起こす領域は局所的であり、この描像を反映した定式化を導入することで、新たな真空泡の構造が見える可能性がある。そこで(2)では、真空崩壊により量子トンネリングを経験する領域とそうでない領域をそれぞれ、ユークリッド描像とローレンツ描像で局所的に記述するため、時空を量子的に扱うことを目的としたWheeler-DeWitt形式に基づいて、真空崩壊の計算を試みた。その結果、これまで知られていたColeman-de Luccia解よりも高い相転移確率を有する解を数値的に見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で提案したローレンツ経路積分による真空崩壊の定式化は、既に論文として成果を報告・公表しており、論文受理も決定した。また、anti de Sitter/conformal field theory(AdS/CFT)対応によって、Coleman-de Luccia解が最も高確率な真空相転移を記述することを証明するための道筋も、代表者の計算によって整備されつつある。したがって、当初計画していた研究課題は順調に進められていると言える。その一方で、当初は予定になかったWheeler-DeWitt形式に基づいた真空相転移の新たな解の提案は、論文を執筆・投稿する段階まで進展し、他の研究機関でセミナーを行う機会を頂いたりと、注目を集めている。この状況を踏まえ、本研究課題の進捗状況は、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
anti de Sitter (AdS)時空でのColeman-de Luccia解で記述される真空泡生成が、最大確率で生じることの証明・確認は現在進行中であり、これを完成させる。 ブラックホールを触媒とする真空崩壊の相転移率の計算を、ユークリッド経路積分に頼らない方法で評価する。これは、真空泡がトンネリングでブラックホールの地平面の内側から外側へ相転移する確率と、その真空泡がブラックホール周りで感じるポテンシャルを内から外へトンネリングする確率を掛け合わせることで評価可能であると仮説を立てており、現在それを検証している。
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Causes of Carryover |
昨年度に発注した計算機材が、半導体不足の影響で大幅に納品の時期が遅れていることが原因である。
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Research Products
(3 results)