2022 Fiscal Year Research-status Report
小スケール天体現象の理解に基づく初代銀河形成シミュレーション: 星団形成の影響
Project/Area Number |
21K20373
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉村 和幸 北海道大学, 理学研究院, 助教 (10773856)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 初代銀河 / 銀河形成 / 星団 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ビッグバンから現在に続く銀河形成史における最初期の段階にあたる、宇宙で最初の銀河 (初代銀河)の形成過程の解明が目的である。2022年夏のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による宇宙初期の銀河形成過程の観測結果の発表を皮切りに、初代銀河の観測的研究は急激に進みつつあり、その解明を理論側から進める事は非常に重要である。本研究では、様々な物理が絡み合う複雑な現象である初代銀河の形成過程に理論的に迫るためシミュレーションを用いるが、その際、大規模数値流体シミュレーションに小スケールの宇宙物理現象に関するより精細な理解を組み込むことで、より現実的に初代銀河形成過程を記述することを目指すのが特色である。
本年度の主な成果としては、銀河を構成する星々の主な形成過程と考えられている分子雲から星団の形成過程について、複数のモデルを組み込んだ初代銀河形成の大規模数値流体シミュレーションをおこない、モデルの違いによって初代銀河形成過程にどのような影響があるかを明らかにしたことがあげられる。このプロジェクトは国際共同研究として進められ、研究成果をまとめた論文は学術誌 Monthly Notices of the Royal Astronomical Society から6月に出版予定である。本研究では、分子雲中での星形成効率が高いほど星団が生き残る確率が上昇するということに加え、初代銀河がバースト的に星を生成して明るく輝いているときは星団中の星からの光が銀河からの光の大半を占めることを明らかにし、初代銀河の観測的特徴についての重要な予言することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たなシミュレーションコードを開発して初代銀河形成シミュレーションをおこない、初代銀河形成過程の理解を進める事ができた。さらに、理論的な理解を進めただけでなく、観測的にも重要な予言をおこなうことができ、最近のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡をはじめとする初代銀河観測の急速な進展とも相まって、このような評価をするに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、新たに開発したシミュレーションコードを用いて初代銀河形成シミュレーションをおこない、星団形成モデルの違いによって初代銀河形成過程がどのように変化するかを明らかにすることができた。現在、星団形成過程は活発に研究が進められているテーマでもあり、その最新の研究成果を組み込んでより現実的な初代銀河形成シミュレーションをおこなうことは次の課題である。
また、現在までの銀河形成過程ではブラックホールが重要な役割を果たしたことが明らかになっており、新たに開発したシミュレーションコードは初代銀河形成過程におけるブラックホールの形成・成長過程も記述できるようにしてあるため、ブラックホールが初代銀河形成に与える影響を調べることも進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナが収束せず、本課題のために元々予定していた海外出張が取りやめになったため。引き続きメリーランド大との国際共同研究を進めており、次年度の海外出張旅費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)