2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for mass accretion process onto intermediate-mass black holes in protogalaxies
Project/Area Number |
21K20378
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊内 大輔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30907374)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | ブラックホール / ガス降着 / 輻射流体計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では3次元輻射流体シミュレーションを行い、原始銀河内における数千から数十万太陽質量程度の超大質量星形成過程、及びその死後残される中間質量ブラックホール(Black Hole; BH)へのガス降着過程について調べている。これまでに、いくつかの原始銀河中での星形成シミュレーションを実施し、原始星がいかにしてガスを集積し、その質量を増やしていくのかを調べた。本研究において特筆すべきは、原始星へのガス降着に伴う星外層の膨張・収縮を考慮し、星の放射スペクトラムが時間的に変動する効果を自己矛盾なく取り入れている点である。これにより、原始星の質量成長の材料となるガスの一部が高エネルギー光子によって光蒸発し、星重力圏から逃れてしまうプロセスを厳密に追うことに成功した。結果として、このような輻射を介した自己制御過程(輻射フィードバック)によって星がその寿命内に獲得できる総質量が大幅に減少する場合があり、先行研究で超大質量星が形成すると思われていた領域で、実際には数百太陽質量程度の星しか生まれない場合があることがわかった。一方で、輻射フィードバックが星成長を阻害するほどは強くなれず、従来の予想通り超大質量星形成が実現する場合があることもわかり、フィードバックの強度は着目する原始星が生まれる環境に大きく依存していることが明らかになった。この結果は、初期宇宙における構造形成理論から最初に誕生する初代星の質量分布を予言する上で極めて重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で実施する流体シミュレーションは二つの段階に分かれており、まず第一段階では原始銀河内でどのような質量を持った星が生まれるかを明らかにし、第二段階ではその星が寿命を終えたのちにBHへと進化したと仮定して、BHへのガス降着過程を調べる。初年度に行うことを想定していた第一段階の計算については、前述の通り概ね完了しており、現在はすでに第二段階の計算を行なっている。第一段階の計算結果は昨年度末に参加したいくつかの研究会で報告しており、現在科学誌へ投稿するための論文を準備中である。第二段階の計算結果についても、初期成果が出始めており、本年度前期中には対外的に発表する予定である。よって、当初予定していた計画通り概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の第二段階に相当する、BHへのガス降着過程の計算を引き続き行う。この計算を通して、初期宇宙で誕生したばかりのBHがどのようにガスを降着させ、質量的に成長してしていくのか明らかにする。さらにシミュレーションからもたらされるBHに落ち込むガスの密度、温度、化学組成の情報を使って、BH周辺からの放射スペクトルを計算する。この理論スペクトルに基づいて、初期宇宙で急速な質量成長過程にあるBHの観測的特徴を予言し、近々本格運行が始まるJames Webb Space Telescopeを用いた観測戦略を提言する。現在の進捗状況から、シミュレーション自体は本年度前期中には概ね完了できる見通しであり、本年度中にデータ解析を進め、研究会や科学誌での発表を目標に研究を進める。
|
Causes of Carryover |
昨年度は主に国内研究会に参加するための旅費として必要経費を請求したが、昨年度末のコロナ感染拡大により軒並み国内研究会がオンライン開催となってしまったために残額が生じてしまった。しかし、代わりに個人的な研究打ち合わせや小規模のワークショップに参加するために旅費を使用することができ、交流した人数は少ないものの、濃密な議論を通して本研究計画の遂行に大いに役立った。本年度も、科研費の多くは旅費として使用する予定である。コロナの感染状況を注視しながらではあるが、海外出張も積極的に行い、昨年度残額分はその必要経費として用いる予定である。
|
Research Products
(3 results)