2021 Fiscal Year Research-status Report
地磁気擾乱を引き起こす磁気フラックスロープの伝搬過程の研究
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21K20379
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伴場 由美 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 特任助教 (30779541)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | コロナ質量放出(CME) / 磁気フラックスロープ / 太陽風その場観測 / 宇宙天気予報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず惑星間空間における太陽風磁場・その場観測データから磁気フラックスロープの磁場構造をモデルフィッティングするプログラム群を構築し、ベンチマークテストを行った。先行研究(西村信彦氏博士論文、Hu & Sonnerup 2001)にて解析された複数のイベントにフィッティングプログラムを適用し比較することで、我々のプログラムでも先行研究と遜色のない結果を得られることを確認した。
次に、2010年4月から2015年12月までに観測された2,384例のコロナ質量放出(CME)イベントについて、水星・金星・地球の3つの惑星軌道における同時観測があるイベントを調査し、66例を抽出した。これらのイベントに対し、CMEの噴出領域である太陽表面の観測データの有無を調査することで、複数探査機によるCME観測と太陽表面の観測データが揃っているイベント(2014年4月イベント)を解析対象イベントと定めた。
本年度はこのイベントに対し、Venus Express(金星軌道)・WIND(地球軌道)・MAVEN(地球-火星間)のそれぞれの探査機が取得した太陽風磁場データにフィッティングプログラムを適用することで、各時刻・各地点での磁気フラックスロープの磁場構造を推定した。各地点におけるMFR磁場構造の開始・終了時刻や、データのsmoothingの時間間隔などを試行錯誤しながらフィッティングを実施しており、結果の解釈について、当該分野の専門家である丸橋博士と定期的に議論を行っている。また、太陽表面でのフレア発生からMFRの伝搬過程における磁場構造の発展までを連続的に理解するため、当該CMEイベントの原因となったと考えられるフレアの解析も同時に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は育休復帰初年度で、子どもの体調不良による看護休暇、またコロナウイルスの感染拡大による保育園の登園自粛・休園などで、当初想定していた以上に研究活動を行えない期間が多くあった。行政の育児支援事業を利用したりテレワークでの対応を試みたが、子どもの月齢も小さく、研究時間を確保することが難しい時期があった。それ故、研究の進捗度合いは「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、複数探査機によるCME観測と太陽表面の観測データが揃っているイベント(2014年4月イベント)について、モデルフィッティングによる磁気フラックスロープの磁場構造の推定と、太陽表面のデータ解析による磁気フラックスロープ噴出過程の解明を進める。これにより、磁気フラックスロープが太陽表面から噴出する過程から惑星間空間を伝搬する過程での発展(動径・経度方向の発展)を理解する。加えて、現在開発されている太陽風伝搬モデルの中で唯一磁気フラックスロープの伝搬を取り扱える「SUSANOOモデル(Shiota & Kataoka 2016)」により計算された各惑星軌道における磁気フラックスロープの磁場構造と、本研究により太陽風磁場・その場観測データから再現された結果を比較することで、モデルと観測の整合性を評価する。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究議論(東京都)および研究成果発表(地球電磁気・地球惑星圏学会)のための国内旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大状況による大学・研究機関等の活動指針を考慮し、対面での研究議論を取りやめたこと、また、学会においてもオンライン開催となり出張の必要がなくなったことで、国内旅費を執行できなかった。また、論文出版に関わる出版費や英文校正費用を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大による保育施設の利用自粛・休園などによる研究活動の遅延により論文出版が遅れていることで、経費執行が滞っている。次年度は、新型コロナウイルス感染が落ち着いた時期に対面での研究議論(東京都)のための国内出張を実施し、研究成果を論文として出版し、国内旅費・出版費用(英文校正等含む)を使用予定である。また、徐々に対面での実施が再開されている国際学会・研究集会(SHINE workshopに参加予定)にて研究成果を発表するため、外国旅費の支出も予定している。
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