2021 Fiscal Year Research-status Report
スロー地震活動を組み込んだ新たな地震活動統計モデルの構築
Project/Area Number |
21K20382
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西川 友章 京都大学, 防災研究所, 助教 (10909443)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | スロー地震 / 地震活動統計モデル / 地震発生確率予測 / 沈み込み帯 / スロースリップイベント / テクトニック微動 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である令和3年度は、(A)スロースリップイベント(SSE)のモーメントレートを陽に組み込んだ新たな地震活動統計モデルの構築と(B)日本海溝におけるスロー地震と地震活動の因果関係の解明に取り組んだ。 課題(A)では、ニュージーランド・ヒクランギ沈み込み帯において、SSEのモーメントレートを陽に組み込んだ新たな地震活動統計モデルを構築した。具体的には、GNSS座標時系列データを用いてSSEのモーメントレートを推定し、それを既存の地震活動統計モデル(Ogata, 1988)の背景地震発生レートの項に陽に組み込んだ。このモデルを、ヒクランギ海溝沿いにおいて2006年から2011年までに発生した3つのSSEと周辺の地震活動に適用した。赤池情報量規準(AIC)に基づいて、本研究の新たなモデルによる地震活動確率予測と従来のモデルの予測を比較し、新たなモデルの予測が優れていることを確認した。これらの成果を、複数の学会・研究集会で発表した。現在、この成果を学術誌に投稿準備中である。 課題(B)では、日本海溝沿いのスロー地震活動を解明するとともに、日本海溝で発生する異常な地震活動の活発化とスロー地震活動の関係を解明する研究に取り組んだ。具体的には、2021年12月までに日本海溝沿いで発生したテクトニック微動活動およびSSE活動と、地震活動統計モデルでは予測できない異常な地震活動の活発化の時空間分布を比較した。その結果、2021年7月から8月にかけて茨城県沖で微動、SSE、および異常な地震活動の活発化が同時発生していた。2021年11月から12月にも、房総半島東方沖においてSSEと異常な地震活動の活発化が同時発生していた。これはスロー地震による地震活動の誘発と考えられる。関連する成果を複数の学会で発表した。現在、この成果を学術誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、当初の大きな目標であった、研究課題(A)スロースリップイベント(SSE)のモーメントレートを陽に組み込んだ新たな地震活動統計モデルの構築を達成することができた。これにより、スロー地震(特にSSE)の発生を陽に考慮した地震活動確率予測が世界で初めて可能になった。これは地震活動確率予測分野における大きな進歩である。さらに、これらの成果を複数の学会・研究集会で発表した。この中には招待講演も含まれており、本成果の注目度の高さを示している。 研究課題(B)では、2021年7月から8月、11月から12月、日本海溝において、スロー地震(テクトニック微動とSSE)による地震活動誘発現象を観測することに成功した。日本海溝において、スロー地震による地震活動誘発現象を準リアルタイムで捉えたのは初めてのことであり重要な観測結果である。また、研究課題(B)で明らかとなった日本海溝沿いテクトニック微動・SSE活動は、令和4年度の研究課題(C)において、新たな地震活動統計モデルを日本海溝沿いの地震・スロー地震活動に適用するあたり使用する重要なデータである。さらに、関連する成果を複数の学会(招待講演)で発表した。 以上のように、令和3年度は、当初の大きな目標を達成し、令和4年度の足掛かりとなる重要な成果もあげることができた。その一方で、当初予定されていた相模トラフおよび南海トラフ日向灘の解析には手が回らなかった。以上を総合的に考慮すると、本研究は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず第一に、令和3年度の研究成果を学術誌に公表することに注力する。そのための論文執筆・改訂作業や追加解析に最優先で取り組む。令和4年度7月までに研究成果を学術誌に投稿することを目指す。 これに加えて、令和4年度は、研究課題(A)で作成した新たな地震活動統計モデルを日本海溝と南海トラフ日向灘の地震・スロー地震活動に適用する(研究課題C)。具体的には、研究課題(A)で作成した新たなモデルのスロー地震による地震活動誘発効果の項に、テクトニック微動および超低周波地震の発生レートに比例する項を新たに導入し、SSE、テクトニック微動、および超低周波地震活動に基づいて地震活動を確率的に予測することを試みる。さらに、新たなモデルと従来のモデルを赤池情報量規準(AIC)に基づいて比較し、新たなモデルによって地震活動確率予測の精度が向上するか調べる。日本海溝では、令和3年度に明らかにしたSSE・テクトニック微動活動を、南海トラフ日向灘では、先行研究によるSSE・超低周波地震カタログ(Baba et al., 2021; Okada et al., 2022)をデータとして使用する。これまで、テクトニック微動および超低周波地震活動に基づく地震活動確率予測は世界的にも行われた試しがなく、成功すれば地震活動確率予測分野における大きな進歩となる。日本地震学会秋季大会およびアメリカ地球物理学会秋季大会において研究成果の発表を予定している。また、令和4年度1月までに研究成果を学術誌を投稿することを目指す。
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