2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K20384
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
川上 雄真 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 研究官 (60906890)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 黒潮 / 風成循環 / アリューシャン低気圧 / 亜熱帯高気圧 / 大気海洋相互作用 / 表層水塊 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒潮の時間変動特性の理解に向けて、昨年度は大きく三つの作業を行った。一つ目は、長期観測資料による調査である。気象庁が維持する船舶観測の資料を用いて、黒潮流量の時間変動を調べた。その結果、(1)黒潮流量の変動周期が時期によって異なること、(2)その変動が冬季の海上風によってコントロールされていること、および(3)アリューシャン低気圧および亜熱帯高気圧の強度や位置の変動と関係があることがわかった。これらの成果をまとめ、国際誌(Climate Dynamics)に発表した(掲載済み)。 二つ目は、黒潮と台風の相互作用に関する研究である。一般に、台風が通過すると海洋表層の水温は低下することが知られているが、暖水移流の顕著な黒潮域においても同様に海洋の冷却が起こるのか否かという点は未解明であった。そこで、モデルを用いた数値実験を行い、台風通過時の黒潮の振る舞いについて調べた。その結果、黒潮は台風が通過しても冷えないことがわかり、また、その理由も明らかになった。加えて、黒潮が冷えないことによる台風への影響(フィードバック)も指摘された。これらの成果をまとめ、国際誌(Journal of Geophysical Research: Oceans)に発表した(受理済み、掲載手続き待ち)。 3つ目は、海洋モデルを用いた、黒潮流量や表層水塊構造の変動の起源に関する調査である。従来、黒潮や水塊の変動は、寒候期の大気場の影響を強く受けるとされてきた。しかしながら、暖候期の影響が無視できるほど小さいということを示した研究はなく、その妥当性は必ずしも保証されていない。寒候期の大気の影響だけで黒潮や水塊の変動をどの程度説明できるのかを明らかにするために、海洋モデルを用いた数値実験を実施しているところである。令和4年度にかけてこの実験の結果を解析し、得られた成果を学会や国際誌にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したように、令和3年度の作業で数値実験の方針を決めることができ、実験の実施に着手することができた。解析まで着手できたわけではないので、当初の計画以上に進んでいるとは言えないまでも、作業の遅れはないと考える。今後の解析作業にどの程度の時間を要するかは不透明だが、議論に値する知見を見出すための時間はあると考える。 一方、研究実績の概要にて報告した通り、この課題を実行する中で(1)観測資料による黒潮流量変動の研究や(2)モデルを用いた黒潮と台風の相互作用に関する研究も行われ、すでに国際誌に掲載されている。この課題に関連して複数の論文がすでに発表されているという点では、当初の計画以上に発展し、成果が上がっている面もあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、モデル実験の結果の解析を行う。当初の計画では、黒潮だけに注目していたが、さらに視野を広げ、北太平洋亜熱帯域に分布する表層水塊にも注目することを考えている。表層水塊の変動は、大気の強制によって引き起こされていることが知られているが、黒潮と同様、寒候期の影響が大きいと考えられているものの、その証拠が十分に提示されていない状況にある。黒潮や水塊の変動が、寒候期の大気変動の影響だけでどの程度説明できるのか、あるいは、暖候期の大気変動の影響があるのか否か、という点を明らかにする。黒潮や表層水塊を通して北太平洋亜熱帯域を広く丸ごと扱い、海洋変動と大気場変動の関係の全体像を提示するような、より大きな研究となることを目指す。 解析した結果は、文章にまとめ、国際誌で発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
本課題では、モデル実験の結果を保存するための大規模記憶装置の購入を計画している。令和3年度の作業(実験設定の検討)で必要な容量については、既存の記憶装置を活用することで賄うことができた。そのため、物品購入の費用が当初の計画よりも大幅に抑えられている。 計画では、出張にて学会や研究集会に参加し、進捗の発表を行うことを考えていた。新型コロナウイルスの影響により、学会や研究集会の多くが中止またはオンライン化され、出張費が大幅に抑えられている。 来年度は、さらに数値実験を行う予定のため、新規で記憶装置を購入する必要が出てくると予想される。翌年分として請求した助成金とあわせて対応したいと考えている。
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Research Products
(2 results)