2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of dust storm and atmospheric waves on Martian atmospheric escape
Project/Area Number |
21K20387
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
益永 圭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (60909521)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 火星 / ひさき / ダストストーム / 大気波動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の火星は寒冷かつ乾燥した気候で、表面に液体の水は存在していない。しかし、近年の探査で得られた地形的特徴から、過去の火星は温暖で表面に液体の水が存在したと考えられている。これまで、過去に存在した水を除去する機構の一つとして大気の宇宙空間への流出が重要視され、太陽風が駆動する大気流出機構についての理解が進んできた。一方、近年の観測により、火星超高層大気の動力学はダストストームや大気波動という下層大気で発生する現象と大きく関連していることがわかってきた。そのため、火星からの大気流出機構を理解するためには、太陽風の影響だけでなく、下層大気からの影響を調べることも必須である。本研究はひさき宇宙望遠鏡および複数の火星探査機の観測データを用い、ダストストームや大気波動が火星超高層大気成分の総量、分布、流出量へ及ぼす影響を調べる。これにより、ダストストーム及び大気波動が火星の大気流出へ果たす役割を解明する。 今年度は2016年9月に火星で発生したダストストームのイベントに着目し、ひさき、MRO、MEX、MAVEN、及びCuriosityといった複数の衛星によって観測された大気光、ダスト、水蒸気、気象データなどを詳細に解析した。その結果、期間中に超高層大気中の水素大気光がゆっくりと増光する一方で、酸素大気光が急減光するという特徴的な変化を捉えた。高度60km程度でダストや水蒸気の上昇スピードが大気膨張のスピードに比べて有意に遅れることが認められたため、水素原子の増加は水蒸気の上方輸送を起因とする一方、酸素原子の急減少は大気膨張に伴った超高層大気の気象変動を起因としていることが予想される。また、地上で発生した大気波動と同様の周期が大気光にも観測され、火星超高層大気はダストストームや大気波動を介して下層大気と結合していることも示した。研究成果は論文としてまとめ、国際学術誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はひさき衛星観測データの初期解析によって見つかっていた大気光の周期変化イベントに関して、複数の衛星のデータ解析を詳細に進めることができた。また、得られた研究成果を論文としてまとめ国際学術誌に投稿することができた。論文は現在リバイズ中であり、間も無く成果を公表できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他のダストストーム期間にMAVENで観測された水素大気光や酸素大気光の時空間変化について調べる予定である。また、大気流出への影響も調べるため、水素イオンや酸素イオンの電離圏密度や流出フラックスの時空間変動についても調べる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により国内・国際学会へ対面参加することがなく、旅費が大幅に余った。次年度は学会へ対面参加することが可能であると思われるため、主に学会参加のための旅費として使用する予定である。
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