2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K20394
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹尾 陽子 東京大学, 物性研究所, 助教 (50910155)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 精密計測 / 形状計測 / X線ミラー / 波面計測 / 光学設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
波長の短いX線を成形・集光するために用いられる斜入射ミラーは、複雑な非球面形状と1 nmレベルの作製精度の双方を必要とする。近年の計測・加工技術の 向上により、長手方向だけでなく短手方向にも湾曲を持つ回転楕円面(双曲面)ミラーや、それらを組み合わせたWolterミラーが実用化されてきた。さらに機能を高めるために、長手と短手で異なる集光特性を持つ非点収差制御ミラーを提案したが、その実現には自由曲面計測手法のさらなる高精度化が必要であった。本課題は、10 mmオーダーの短手曲率半径を持つ自由曲面の計測手法の開発と、X線放射光施設における非点収差制御ミラーの機能実証を目的とする。 2021年度は、非点収差制御ミラーの設計手法の基礎検討ならびに複数走査型測長プローブを用いたテストサンプル計測を行った。2022年度は昨年に引き続き、多くの放射光施設で今後必要とされるであろう、鉛直方向と水平方向に異なる集光性能を持つ新規X線ミラーの設計を行った。実際に設計・作製したミラーを放射光施設SPring-8の軟X線ビームラインBL25SUに導入し、設計通り鉛直・水平で10倍の縮小倍率比を示すことを確認した。事前の接触式プローブを用いた3次元形状計測結果とX線波面計測結果を比較し、前者には3次元形状計測手法には500 μmから1 mm周期の形状計測に課題があることが明らかとなった。 本研究課題を通じて、非点収差制御ミラーの一種として、鉛直方向と水平方向で異なる集光特性を持つ新しいミラーを開発した。X線を用いた評価結果により、現状の作製精度はPVで15 nm程度、計測の再現性は1 nmであると確認した。現状利用可能な加工手法にはサブナノメートルの精度を持つものが既に存在するため、本研究で得られた計測結果を利用することで、今後理想的な形状と機能を持つ非点収差制御ミラーが実現すると期待する。
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