2021 Fiscal Year Research-status Report
超並列デジタル電気穿孔による遺伝子導入の網羅的現象解明とiPS細胞の生産性向上
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21K20398
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岡本 俊哉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00909294)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 電気穿孔法 / エレクトロポレーション / 遺伝子導入 / マイクロウェル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,無数に配列したマイクロウェル内に,疑似的に細胞懸濁液の液滴を形成し,その中で細胞へ電気穿孔法にて遺伝子導入を行うものであり,この液滴形成では,受動バルブを利用した特殊な流路構造とすることで,液体を自律的に制御し,懸濁液およびそれを単離するためのオイルを流路へ順次送液するだけで簡便に液滴を形成できることが特徴である, 令和3年度は,まず,この液滴形成デバイスの作製に取り組んだ.個々のマイクロウェルに3個1組の受動バルブを配置したデバイスを作製し,提案原理に基づき,液滴が形成されることを確認した.一方で,液滴形成条件の評価を行ったところ,圧縮された空気の作用により,受動バルブの耐圧性能が向上することがわかり,当初想定していたよりも多くの液滴を形成可能であることが確認され,液滴形成のための設計条件式の修正を行った.また,細胞を懸濁した液体を用いた際においても液滴が形成されることを確認し,細胞懸濁液の液滴の自律的な形成を実現した. 次に,液滴を形成するマイクロ流路と電極を統合したデバイスを作製し,このデバイスで液滴内の細胞へ電気刺激を与えることができるかを検討した.この検討では,細胞が刺激を受けると細胞内のカルシウムイオン濃度が変化することを利用し,細胞内に予めカルシウムイオンの指示薬(Fluo 3-AM)を導入し,そこへ電極から電圧を印加することで検証を行った.その結果,電圧印加により,指示薬の変化を確認することができ,さらに100 kHz,±6Vで最も大きな変化が見られ,本研究で提案するデバイスにより,細胞へ電気刺激を与えられることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案原理に基づき,自律制御型のマイクロ流体デバイスを作製し,細胞懸濁液のマイクロ液滴を形成可能であることを確認した.デッドエンドの流路にトラップされた圧縮空気が受動バルブの耐圧性能向上に寄与することを見出し,想定よりも多くの液滴を形成可能であることを実証した.さらに,ヒト胎児腎細胞株(HEK293細胞)を用い,液滴へ電圧印加を行った実験では,液滴内の細胞へ電気刺激を与えられることを確認するなど順調に進行しており,現在は,より高効率な電気刺激印加を目的に流路構造の最適化を行っている段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に得られた研究成果を基盤に,今後はより効率的にかつ再現性の高い電気穿孔技術の実現を目指す.具体的には,現段階では形成された各液滴へ封入される細胞の個数の再現性が乏しく,効率的な電気刺激の印加の妨げとなっていると考えられる.このため,細胞の分散性を向上させる流路構造を実装することで,均質な細胞懸濁液滴形成を実現し,電気穿孔条件検討のためのプラットフォームを完成させる. そして,まずはヒト胎児腎細胞株(HEK293細胞)への緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子発現を指標に,本提案デバイスによる細胞への遺伝子導入を実証する.その後,印加電圧や周波数,時間のほか,電極の位置や形状などをパラメータに,発現効率向上のための最適化を行い,本デバイスを用いた電気穿孔技術の現象理解を行う.
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