2021 Fiscal Year Research-status Report
Revelation of lubrication mechanisms of 100% cellulose nanofiber moldings by a tribo-operand spectroscopic method
Project/Area Number |
21K20402
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
大久保 光 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 助教 (50906352)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | トライボロジー / セルロースナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,水中カウンターコリジョン法により調整されたセルロースナノファイバー(CNF)水分散液から作製した100%CNF成形体とSUJ2鋼材とを摩擦させた場合のトライボロジー特性及びその摩擦面構造・トライボフィルムについて調査した.その結果,以下の知見を得た.(1) 無潤滑環境下の場合,CNF成形体の摩擦・摩耗特性は試験温度に依存し,高温条件において高摩擦・高摩耗を示す.一方,油潤滑環境下では,顕著な摩擦・摩耗特性の温度依存性は確認されず,摩擦係数0.1以下の優れた摩擦特性を示す.(2)CNF成形体の摩擦面では,セルロース結晶構造が崩れ,その表面構造は非晶質な状態に変異する.この非晶構造変態は無潤滑環境下の高温摩擦条件(50℃,80℃)で顕著に進行する.また,このCNFの非晶質変態は摩擦表面近傍のナノ力学特性に影響を及ぼす.(3)CNF成形体-鋼材摩擦界面では酸化鉄層が形成されており,無潤滑環境下80℃条件でこの酸化鉄の生成が促進される.CNF-SUJ2摩擦界面における酸化鉄層の異常生成が無潤滑環境下80℃条件での高摩擦・高摩耗に寄与しているものと推察される. 上述した結果より,CNF成形体は摩擦場においてその結晶構造が変異しており,その摩擦・摩耗特性に影響を及ぼすことが示唆された.また,上述した結果以外の実施事項として,分光分析による摩擦面その場観察装置の開発・CNF成形体加工法の確立する事ができた.次年度は,基礎的な潤滑機構を調査し,CNF成形体のバルク・界面設計を見直すことで,成形体の低摩擦・低摩耗化に向けた設計指針の確立を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果により,CNF成形体の摩擦材料としての可能性を示し,次年度に運用する「摩擦面その場観察摩擦試験機」の開発を終えた.また,CNF成形体の摩擦材料としての加工法の確立・CNF成形体への添加剤導入による高機能化についても次年度に先駆けて実施した.従って,当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,CNF成形体を単にバイオマス素材(環境に優しい素材)としての使用するのではなく,他材料のトライボロジー特性を凌駕する「次世代トライボロジー材料」に向けたCNF成形体のアップグレード化を目指す.具体的には,CNF成形体が「セルロース」の高い界面活性を有する事から,この特性を生かした摩擦表面の界面構造制御を施すことで,CNF成形体から成る超低摩擦バイマストライボロジーシステムの構築に向けた基盤を確立する事を目指す.加えて,CNF成形体の基礎的な潤滑特性については,摩擦面のその場観察装置により明らかにする.とりわけ,CNF成形体の構造が如何に摩擦特性・摩耗特性に影響を及ぼすかを調査するべく,CNF成形体の結晶構造に着目した調査を行う.
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