2022 Fiscal Year Annual Research Report
Revelation of lubrication mechanisms of 100% cellulose nanofiber moldings by a tribo-operand spectroscopic method
Project/Area Number |
21K20402
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大久保 光 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 助教 (50906352)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | トライボロジー / セルロースナノファイバー / オペランド計測 / 分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,次世代の超低摩擦性能・高環境調和性を兼備した摺動機械要素の創製に向けた基礎研究として,「100%セルロースナノファイバー(CNF)で構築された成型体(以下,100%CNF成型体)」に着目し,そのトライボロジー特性及び潤滑機構を調査した.また,その潤滑機構を明らかとする手法として,セルロースの構造解析に優れるRaman分光法を利用した「オペランド分析法」を開発した.本年度の研究によって得られた成果として,潤滑油を供さない適当な摩擦試験条件では,100%CNF成型体は従来エンジニアリングプラスチックより摩擦・摩耗特性に優れる事が明らかとなった.また,潤滑油を供する摩擦試験条件では,エステル分子を含んだ潤滑油において,現行の低摩擦コーティング材料であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜に匹敵する超低摩擦性能(摩擦係数:0.01程度)を示した.分光分析及び原子間力顕微鏡による界面構造の分析の結果より,上述の潤滑機構は,いずれも成型体を構成するセルロース分子が創り出す特異な界面構造にあることを突き止めた.上述の分析の結果は,この特異な界面構造は,単にエステル分子が吸着膜を形成するだけでは発現し得ない物性・構造を示しており,高分子の表面形態の一つである「ポリマーブラシ」のような構造体である可能性が示唆されている.すなわち,100%CNFで構築された成型体が,エステル分子の吸着に伴う疎水化と摩擦剪断に伴う力学的な作用により,化学・機械解繊されることで,ファイバー状の構造となり,潤滑油に膨潤する事で,摩擦場において超低摩擦層を自発的に形成したものと推察される.加えて,本年度,上述のCNF成型体の界面構造の評価を進めるため,時間分解で表面増強Raman分光分析法を可能とする「透過型表面増強RAMAN分光分析基板」と専用の「摩擦試験機」を開発した.
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