2021 Fiscal Year Research-status Report
遊星式スピンコーターのせん断力制御による高粘度粒子分散液材料の塗膜制御技術の開発
Project/Area Number |
21K20417
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
徳丸 和樹 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (80909523)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | スピンコート / セラミックス薄膜 / 高粘度流体 / 無機EL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,遊星式スピンコーターによる新たな高粘度スラリー材料の薄膜成形・粒子制御技術の確立である.そのため,遊星式スピンコーターの自転・公転速度及び材料の粘性がスラリー内部に発生するせん断力に与える影響と,発生したせん断力の制御手法を明らかにすることが必要となる. 2021年度の目標はアルミナスラリーを用いたモデル実験により,遊星スピンコーターによるセラミックスグリーンシート成膜の実験手法を確立することであった. 遊星式スピンコーターについては,成膜基板上に加わる遠心力を考慮しながら設計を行い,自転と公転の回転比1:5となる装置を開発した.開発した遊星式スピンコーターを用いて水系アルミナスラリーによるグリーンシート成膜実験を行ったところ,従来のスピンコーターと比較し,表面うねりを1/25にまで抑えることに成功した.本装置の開発により,直径50mmまでの基板上に均一薄膜の成膜が可能となり,今後の無機系素子などの開発に展望が見えてきた. また,遊星式スピンコートによる無機ELの作製にも着手しており,チタン酸バリウムを用いた誘電層,硫化亜鉛を用いた蛍光体層の作製を行っている.作製した無機ELでの発光も確認できており,現在は膜厚の制御により大面積均一発光を目標に研究を進めているところである. 2021年度の研究の進展により,遊星式スピンコートによる直径50 mmの基板上への均一セラミックス薄膜の製造が可能となり,次年度の目標であるアプリケーション開発に期待できるものとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標にしていたアルミナスラリーを用いたモデル実験にはおおむね成功しており,成膜実験は順調に進展している.半導体不足による遊星式スピンコーターに必要なモーターやドライバの納入が大幅に遅れるなどのトラブルは発生したが,事前の設計通りに遠心力制御を行うことが出来ているようであり,結果として従来のスピンコートと比較し表面うねりを1/25にまで抑えることに成功しており,想定以上の膜厚均一性が得られた.また,当初の予定よりも早くチタン酸バリウム粒子を用いた成膜実験も行うことができ,発光可能な無機ELの作製まで進展できたことは非常に順調であると考えている. 一方で,流体解析を用いた成膜基板上の粒子の流動解析についてはほとんど進展しておらず,遠心力の見積によるスラリー全体の流動予測に留まっている.本研究での目標の一つに解析により加工条件を事前検討することで効率的な研究開発を進めることがあったが,その点に関しては目標よりも遅れていると言える. 全体で見ると,流動解析による成膜基板上の粒子挙動の把握は行うことができていないが,遠心力の見積によるスラリー全体の流動予測を利用した加工条件の設定だけでも今のところ十分に膜厚均一性が得られており,遊星式スピンコーターによるセラミックス均一成膜という一番の目標についてはおおむね順調に進展していると判断している. また,研究発表については当初は2つの学会に参加し発表を行う予定であったが,特許申請のため現在は発表を控えている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の推進テーマは,遊星式スピンコーターによる無機誘電膜の開発と,流体解析を用いた成膜基板上の粒子の流動解析の二つである. 無機誘電膜の開発では,現在研究を進めているチタン酸バリウムを用いた誘電膜の製造をさらに進展させていく.具体的には,チタン酸バリウム粒子の粒度調整や使用する樹脂バインダの配合量調整を行い,薄く均一な誘電層を作製し,均一に高輝度な発光を行う無機ELの開発を行う.使用するセラミックススラリーの材料特性と加工条件が成膜に与える影響がいまだ不明確であるため,様々な条件にて成膜実験を行い,材料特性と加工条件が製膜に与える影響を調査する.また,装置の改良にも取り組み,現状のギア駆動による一定回転比から変更し,モーター駆動により自由に回転比を制御可能とすることでより高度な流動制御を目指す. 流動解析では,2021年度に達成できなかったスラリー中での粒子の運動解析を行う.回転数を自由に変化させた場合の流動挙動は不明な点が多く,流動解析によって原理を解き明かすことを目標としている.セラミックススラリーの流動解析は固液二相流となっているため,通常の流動解析よりも考慮すべき点が多く,研究が滞っている状態であるが,離散要素法を用いた固液二相流解析の専門家と相談することが出来ており,今後は解析が進展すると期待される. 最終的には新規遊星式スピンコーターの開発と材料粒子の流動解析を参考にした加工条件の設定により,セラミックス粒子のスラリー内配向を実現し,今までにない高効率な誘電膜の開発を目指す.
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