2021 Fiscal Year Research-status Report
自己保護機能を持つ永久電流・ヘリウムフリー高温超伝導磁石技術の開発
Project/Area Number |
21K20419
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
末富 佑 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20908587)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 高温超伝導磁石 / 強磁場磁石 / クエンチ / 電気的接触抵抗 / 導電性エポキシ樹脂 / 極低温冷凍機 / 電気等価回路解析 / 熱伝導解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷凍機冷却層内無絶縁レイヤー巻コイルの開発を目指し、 (a) 磁石保護 の性能評価に向けて、研究の要となる層内無絶縁レイヤー巻コイルの熱的・電磁気的挙動を解析できる数値解析コードを改良し、従来の解析コードに比べて計算時間を1/400に低減した。実用規模の層内無絶縁レイヤー巻コイルを数時間で解析できるようになった。 数値解析コードを用いて、モデルコイルを対象に保護挙動の解析を実施したところ、層内無絶縁レイヤー巻コイルの巻線内部における銅シートと高温超伝導線材間の電気的接触抵抗の値によってコイルの挙動が大きく変化することが明らかになった。接触抵抗が小さすぎると大きな電磁力によってコイルが機械的に損傷し、接触抵抗が大きすぎると局所的な温度上昇によってコイルが熱的に劣化してしまう。接触抵抗の値によってはコイルが保護できないことが明らかになったが、逆にいえば、接触抵抗を制御することで、コイルの保護性能の制御が可能になる。よって、接触抵抗の値をコントロールするための要素検討を実施した。具体的には、導電性エポキシ樹脂を用いて銅シートと高温超伝導線材を接着する手法を検討した。結果として、エポキシ樹脂に混ぜる粉の材質(銅、炭素)と量(1-15vol%)を変化させることで、接触抵抗率を1-1000 mΩcm2と3桁に渡って制御できることが分かった。 接触抵抗率の値によって巻線内部の伝熱特性が変化するため、(c) 冷凍機冷却 を適用した際の冷却特性にも影響を及ぼすと考えられる。今後、冷凍機冷却層内無絶縁レイヤー巻コイルを開発するにあたり、保護特性と冷却特性を両立できる接触抵抗率の値を推定し制御することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、小型の層内無絶縁レイヤー巻コイルを製作して冷凍機冷却を実施する予定であったが、冷凍機の整備に時間を要するため、先に解析コードの改良を実施した。その過程で、接触抵抗率によってコイルの保護性能が大きく変化することを認識した。開発上重要な課題だと判断し、冷凍機冷却試験に先んじて接触抵抗率の制御に向けて要素技術検証を実施した。このため、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
接触抵抗率の制御は、導電性エポキシを用いた手法によって見通しが立ってきたが、現状短尺サンプルでの検証しかできていないため、コイル形状で接触抵抗率が制御できるか検証する。また並行して、小型層内無絶縁レイヤー巻コイルを製作して冷凍機冷却試験を実施する。この時、接触抵抗率を変化させて複数のコイルを製作して試験し、冷却時の伝熱特性への接触抵抗率の影響を観察する。また、上記の冷凍機冷却層内無絶縁レイヤー巻コイルを用いて保護動作の挙動も観察する。
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Causes of Carryover |
所属機関研究チームが所有する冷凍機の整備費用として、2021年度直接経費その他の項目に70万円計上していたが、2021年度は別開発項目を実施したため、使用しなかった。2022年度に冷凍機の整備を実施予定である。
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