2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド集積法による高感度ダイヤモンド磁気量子センサーの開発
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21K20428
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
勝見 亮太 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40908505)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 量子センサー / 量子光学 / NVセンター / ハイブリッド集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ダイヤモンド中のNV中心が、量子光源や量子メモリー、量子センサーなど幅広い観点から注目を集めている。NV中心とは、ダイヤモンド格子中の炭素の置換位置に入った窒素と、それに隣接する炭素原子が抜けてできた空孔からなる不純物欠陥であるが、室温下における優れたスピンコヒーレンス特性を有し、光によるスピンへのアクセスが可能なため、磁場や温度、圧力といった様々な物理量の高感度量子センサーとしての応用が期待されている。特に集団のNV中心を利用するダイヤモンド量子センサーは、理論上、超伝導量子干渉素子といった従来型の磁気センサーに匹敵する磁気感度が室温で到達可能であることから、次世代の高性能磁気センサーとして盛んに研究が進められている。しかし、これまでに報告されてきた集団NV中心に基づく磁気検出の感度は高々pT/√Hz程度での実証に留まっており、従来型の量子センサーに比べて数桁も性能が劣っているのが現状であった。そこで、ダイヤモンド量子センサーの実用化に向けて、磁気検出感度の向上が至上命題であった。そこで本研究では、高感度な磁気検出が可能なダイヤモンド量子センサーの実現に向けて、NV中心からの高効率な発光取り出しを可能にする新奇デバイス構造を、転写プリント法を活用することで、グレーティング構造をダイヤモンドNV基板上に集積し、世界に先駆けて実現することを目指す。本年度では、高感度な磁気検出が可能なダイヤモンド量子センサーの実現に向けて、NV中心からの高効率な発光取り出しを可能にする他材料系グレーティング構造の設計、ダイヤモンドNV基板上への同構造のハイブリッド集積、さらには作製デバイスにおけるNV中心からの発光取り出し効率向上を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では初めに、ダイヤモンドNV中心から発光取り出しを最大化するデバイス構造を設計した。同グレーティング構造の導入によって発光検出効率が10倍以上になることを電磁界シミュレーションに基づく数値計算上確認している。なお、NV中心は波長700 nm付近で発光するため、グレーティングに用いる材料系として、同波長における動作と光ロスの低減が可能な上、半導体加工技術の成熟している窒化シリコン(Si3N4)の利用を検討した。数値計算の結果をもとにSi3N4からなるグレーティング構造を、転写プリント技術と整合するように作製することにも成功している。 次に、転写プリント法を基軸としたグレーティング構造のダイヤモンドNV基板上集積技術を開発した。まず、グレーティング構造のダイヤモンドNV基板上ハイブリッド集積に必要な転写プリント装置を構築した。同装置を利用して、ダイヤモンド基板上へのSiNからなるグレーティング構造を集積し、高い成功率で集積可能なことを確認した。作製した試料に励起光(532 nm)を照射して発光スペクトルを取得したところ、グレーティング構造の導入による光強度の増加を確認することにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製デバイスの詳細な光学特性評価を行う。作製したデバイスの動作実証については、所属研究室において確立された光学系を利用する。作製デバイスの光学特性や磁気感度の評価に必要な高出力レーザや光検出器、マイクロ波発生器などがすべて完備されており、現存の測定系で作製デバイスの評価は十分可能である。グレーティング構造上での発光強度を、同構造のない箇所と比較することで、作製した光構造によってNV中心からの発光を高効率に光ファイバーへ導出できることを実験実証する。さらに作製デバイスを基づく磁気センサーを開発し、磁気検出の向上が可能なことを実験的に示すことで、世界に先駆けて次世代高性能量子センサーの実用化に向けた先鞭をつける。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大によって、光学系構築に関する実験予定が遅れてしまったため。 今年度は光学系の構築に必要な素子の購入に必要な経費を計上する。また、本研究によって得られる成果を発表するために必要となる、論文投稿・学会発表に必要な経費を計上する。
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Research Products
(1 results)