2021 Fiscal Year Research-status Report
電子状態観察と分光学的解析による炭化珪素/酸化膜界面欠陥の起源解明
Project/Area Number |
21K20429
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 拓真 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20827711)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 炭化珪素(SiC) / 二酸化珪素(SiO2) / 電界効果トランジスタ(MOSFET) / パワーデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
SiCはパワーデバイス応用に有望なワイドバンドギャップ材料であるが、SiO2/SiC構造の高密度欠陥がMOSFETの性能向上を阻んでいる。本研究では、物理分析および電気的評価を駆使して欠陥の起源を追究し、高品質SiO2/SiC構造の形成指針確立に挑んでいる。本年度に得られた成果は、以下の通りである: (1) 窒化による非基底面SiC MOSデバイスの信頼性劣化の発見 SiC(11-20)面(a面)、(1-100)面(m面)などの非基底面上に作製したMOSFETは、業界標準のNO窒化プロセスにより高い移動度が得られることで知られている。しかし窒化が非基底面デバイスの信頼性(酸化膜絶縁性および閾値電圧安定性)に与える影響は十分に明らかでない。本研究では、放射光XPS分析によるバンドアライメント評価により、窒化がSiO2/SiC(11-20)構造の伝導帯オフセットを0.2 - 0.3 eV低下させることを指摘した。これにより、窒化はa面SiC MOSデバイスのリーク電流の増大やフラットバンド電圧安定性の劣化を招くことを明らかにした。なお、本信頼性の劣化は、m面SiC MOSデバイスでも同様であることを見出した。 (2) 窒化SiC MOS構造のエキシマ紫外光照射に対する脆弱性の発見 SiO2/SiC(0001)構造に対し、エキシマ紫外光照射の影響を調査した。酸化プロセスのみで形成したSiO2/SiC(0001)構造では紫外光照射の影響は軽微であるのに対し、窒化プロセスを経た試料では、紫外光照射により界面準位や電子トラップが生成することを指摘した。このことから窒化プロセスは一見欠陥低減に有効であるが、紫外光照射で活性化する欠陥を誘起することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、界面の物理分析とMOSデバイスの電気的評価を組み合わせることで、SiC MOSFETの性能・信頼性に影響を及ぼす欠陥に関する重要な知見が得られた。特に当初想定していなかった窒化プロセスの問題点を見出すことができた。具体的には、様々な窒化を施したSiO2/SiC(11-20)構造の放射光XPS分析および電気特性評価の結果、界面窒化の進行とともにSiO2/SiC構造の伝導帯オフセットが低下し、これが酸化膜の絶縁性劣化および電荷注入耐性の劣化を招くことを明らかにした。一方で、十分な窒化は界面欠陥低減に不可欠であるため、本信頼性劣化は深刻な課題といえる。さらにSiO2/SiC(0001)構造では、窒化により紫外光照射で活性化する欠陥が新たに生成することを見出した。このように理想MOS構造形成にあたり重要な知見を獲得し、成果を学術論文および学会発表を通じて発信することができたため、「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射光XPSを初めとする高精度な物理分析を引き続き活用することで、SiO2/SiC界面の微視的構造や化学結合状態、バンドアライメントに関してより詳細に調査したい。また、同時にMOS構造の電気的評価を実施し、界面準位や固定電荷、酸化膜中トラップとの対応関係を調べる。酸化条件や熱処理条件を変えた試料を用意し、MOSデバイスの性能や信頼性を制限する欠陥の起源を探求する。得られた知見に基づいて欠陥の抑制法を検討し、高品質SiO2/SiC構造の形成指針確立を目指す。
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Research Products
(6 results)