2021 Fiscal Year Research-status Report
Beyond 5Gへ向けた無線通信システムの非線形理論の拡張
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21K20437
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
小松 和暉 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター, 研究員 (90912402)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 無線通信 / 非線形性 / 非理想性 / 理論解析 / 帯域内全二重通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2年計画であり、初年度の2021年度には理論解析の対象の拡張として、任意の関数で表される非線形性について解析できるように、無線通信における非線形性の理論を拡張する予定であった。そして、当初の計画通り、2021年度では理論解析できる対象を拡張するための理論的な考察を行った。これによって、従来までは増幅器のようなAM-AM/PM非線形性のみしか扱えなかった理論を、PM-AM/PM非線形性が扱えるように拡張できた。従来までの理論でAM-AM/PM非線形性しか扱えなかった理由は、従来理論で利用している一般フーリエ級数展開が一次元であるためである。一般的に、等価低域系信号は複素数で表されるため、従来理論の一次元の一般フーリエ級数展開では振幅方向の非線形性しか表現できなかった。そこで、位相方向についても直交性を満たす基底を利用することで、一般フーリエ級数展開を二次元に拡張し、PM-AM/PM非線形性を扱えるように拡張できた。また、拡張した二次元の一般フーリエ級数展開に基づく非線形理論は、あらゆる無記憶非線形性を理論解析できることを数学的に証明できる。よって、拡張した理論によって、増幅器の非線形性のみならず、たとえばI/QミキサのインバランスやA/D変換器の量子化雑音なども、同一の理論を用いて理論解析することができる。 また、従来までの理論は入力信号が複素ガウス分布に従う場合のみしかシステムの解析ができなかった。その条件を緩和するために、2021年度には一般の分布に従う信号で理論解析できないか調査した。理論的な考察の結果、従来の理論を一般の分布に拡張した理論は再生核ヒルベルト空間に関連することが示唆された。また、この結果の一部を利用してDPDを用いる帯域内全二重端末の理論解析を行いRCS研究会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2021年度に理論解析を拡張し、2022年度にはその理論を応用して実際に帯域内全二重システムの解析を行う予定であった。実際に、2021年度には従来までは増幅器のようなAM-AM/PM非線形性のみしか扱えなかった理論を、PM-AM/PM非線形性が扱えるように拡張できた。従来までの理論でAM-AM/PM非線形性しか扱えなかった理由は、従来理論で利用している一般フーリエ級数展開が一次元であるためである。一般的に、等価低域系信号は複素数で表されるため、従来理論の一次元の一般フーリエ級数展開では振幅方向の非線形性しか表現できなかった。そこで、位相方向についても直交性を満たす基底を利用することで、一般フーリエ級数展開を二次元に拡張し、PM-AM/PM非線形性を扱えるように拡張できた。また、拡張した二次元の一般フーリエ級数展開に基づく非線形理論は、あらゆる無記憶非線形性を理論解析できることを数学的に証明できる。よって、拡張した理論によって、増幅器の非線形性のみならず、たとえばI/QミキサのインバランスやA/D変換器の量子化雑音なども、同一の理論を用いて理論解析することができる。このように、2021年度に予定していた研究内容は概ね完遂しており、当初の計画通り2022年度には拡張した理論を用いて実際に帯域内全二重システムの解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2022年度は、2021年度に拡張した理論を応用して実際に帯域内全二重システムの解析を行う予定である。このとき、IQインバランスのみに限らず、電力増幅器(PA)の歪みや局部発振器の位相雑音、さらに量子化雑音やフェージングまで理論解析に考慮することで、より現実の環境に近い理論解析を目指す。拡張した理論は増幅器の非線形性のみならずIQインバランスや量子化雑音なども同一の理論を用いて解析することができるため、複雑な非線形性を有するシステムも従来よりも簡単に高精度に理論解析できることが期待される。そして、帯域内全二重において干渉キャンセラが受ける非線形性の影響を理論的に解析し、今後の帯域内全二重の研究開発へ応用する。この解析結果は論文化し国際紙に投稿することを目指す。 また、2021年度に発表したDPDの理論解析についても同様に論文化し投稿することを目指す。2021年度の発表時では、2台の端末を想定し、それぞれの端末が同一の非線形特性を有している状況を仮定していた。2022年度には2台以上の端末で、かつそれぞれの端末が異なる非線形特性を有している場合でも解析できるように拡張をする。これにより、双方向の帯域内全二重やマルチホップネットワークなどにおける非線形性の解析なども可能になる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は二つある。一つはコロナ禍の影響と世界的な半導体不足による実験用機器の納期遅延により、購入予定の物品の一部が今年度中に調達できなかったためである。 もう一つは、旅費や論文掲載費などを想定していたその他の項目を、他の予算から拠出することができたためである。未使用金は2022年度の実験用物品の購入に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)