2021 Fiscal Year Research-status Report
超伝導ナノワイヤを積層した高性能な単一光子検出器の開発
Project/Area Number |
21K20438
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
知名 史博 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究員 (90912436)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 単一光子検出器 / 超伝導エレクトロニクス / 誘電体多層膜 / 光共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導ナノワイヤ単一光子検出器 (SSPD) は紫外光から中赤外光に及ぶ幅広い波長領域において感度を有するが、実際には超伝導ナノワイヤへの光吸収率を増強するために配置する誘電体光共振器の設計により高い感度をもつ波長領域は大きく依存する。本研究ではナノワイヤ2層と3つの誘電体共振器で構成されたナノワイヤ積層型SSPDを開発することで、広波長帯域と高感度を両立する単一光子検出器の実現を目指している。ナノワイヤ積層型SSPDの作製には、スパッタリング法などを用いて超伝導ナノワイヤ上に均質な誘電体膜を成膜することが必要不可欠であるが、このときナノワイヤがプラズマに晒されることでナノワイヤの超伝導特性が劣化することが懸念される。そこで本年度は、超伝導ナノワイヤ上への二酸化ケイ素 (SiO2) のスパッタリング成膜条件の検討および、ナノワイヤの超伝導特性および光子感度への影響の調査を行った。この際、超伝導ナノワイヤを成膜する基板の影響も併せて調査するため、熱酸化膜付きシリコン基板及び誘電体多層膜付きシリコン基板の2種類を使用した。その結果、熱酸化膜付きシリコン基板使用時はスパッタ電力を下げてSiO2を成膜することで、ナノワイヤの超伝導特性 (超伝導転移温度、臨界電流値) の劣化が抑制されることを確認した。一方で誘電体多層膜付き基板を用いる場合は、イオンビームクリーニングによる基板表面処理を行うことで、熱酸化膜付きシリコン基板使用時と同様の結果が得られることを確認した。またSiO2成膜後の超伝導ナノワイヤに単一光子照射試験を行ったところ、本研究の目的波長600 nm光より光子エネルギーの低い波長1550nmの近赤外光に対しても内部効率が飽和することを確認した。また波長600nm帯の単一光子試験実施のため、光学系の整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は熱酸化膜付きシリコン基板について超伝導ナノワイヤの作製条件およびSiO2成膜条件の検討を行う計画であったが、誘電体多層膜付き基板を用いた場合の条件出しも追加で実施した。その結果、より光学特性の設計自由度が高い誘電体多層膜付き基板を用いたナノワイヤ積層型SSPD実現への見通しを得ることができた。一方で、上記の条件出しを追加で行ったことで2層目のナノワイヤ作製の条件出しが完了しておらず、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、遅れが生じている2層目のナノワイヤ作製の条件出しを進める。また並行して波長600 nm領域に高い感度を持つナノワイヤ積層型SSPDの設計を進める。ナノワイヤ積層型SSPDに用いる誘電体材料としてはSiO2 と二酸化チタン (TiO2) を想定しており、これら2種誘電体薄膜の高周波スパッタ装置での成膜条件出しと薄膜特性評価は既に実施している。これらの薄膜情報を元に、有限要素法を用いてナノワイヤ積層型SSPDの設計を進める。ナノワイヤ作製の条件出しののち、設計したナノワイヤ積層型SSPDを作製し、スーパーコンティニューム光源を用いた光学特性評価を行う予定である。
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