2021 Fiscal Year Research-status Report
機械学習とベイズ更新を用いたリアルタイム津波リスク評価手法の開発
Project/Area Number |
21K20441
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 怜佳 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50900320)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | リアルタイム津波リスク評価 / 固有直交分解 / ベイズ更新 / 津波シミュレーション / 最尤シナリオ同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
発生と同時に伝播・遡上よりもはるかに早く沿岸部リスクを予測するリアルタイム津波リスク評価技術は,信頼性と即時性を両立する必要がある.この二つの性能は近い将来その到来が憂慮されている南海トラフ沖地震津波で,さらに高い水準で両立することを求められている.こうした要求に応えるために,既存手法に替わる,新しいリアルタイム津波リスク評価技術の開発が望まれる.本研究では, 津波シミュレーション技術と,教師なし学習(固有直交分解),ベイズ理論に基づく最尤シナリオ推定という3つの要素技術によって,信頼性と即時性の両方を兼ね備えた,新しいリアルタイム津波予測技術を開発することを目的とする. 2021年度は要素技術①(固有直交分解)と要素技術②(ベイズ理論による最尤推定・更新)の技術実装および連携を完了させ,最尤津波シナリオ同定システムの開発をおおよそ完了させた.TUNAMI-N2(要素技術③)によって生成された666件の南海トラフ沖地震・津波シナリオデータベースを学習データとテストデータに分割し,開発システムに適用することで,そのシナリオ推定精度や妥当性の検証を行った.テストデータを実際の災害時に得られる観測データに見立て,擬似的にリアルタイム最尤津波シナリオ同定を擬似的に行った結果,学習データの中から最大波高や津波到達時刻,津波波源となる震源断層の位置や種々パラメータが非常に類似したシナリオが同定されていることを確認できた.得られた一連の成果は,国内外での学術集会に参加し,口頭発表を行うことで積極的にアウトリーチ下.すそ野の広い会議を選んで発表したことから,津波工学や地震工学,データサイエンスなど様々な分野の専門家たちと有意義なディスカッションを行うことができ,開発手法のブラッシュアップに必要な課題を明確化できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
所属研究機関に蓄積されていた南海トラフ沖を対象とした666件の地震・津波シナリオデータベースを利用することができたため,TUNAMI-N2(要素技術③)により新たにシナリオベースを生成する必要がなくなった.これにより,早期に要素技術①(固有直交分解)と要素技術②(ベイズ理論による最尤推定・更新)の連携作業に着手することができ,当初令和4年度に完遂させる予定であった最尤津波シナリオ推定手法の開発をほぼ完了させることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
学術集会への参加時に受けた,①学習データとなるデータベースに含まれるシナリオの数が不十分である,②データベース内に類似したシナリオが非常に少ない場合や,実際の観測データを用いた検証を行うべき,③最尤シナリオの推定ではなく浸水深や最大波高などの指標を不確実性と共に提示するシステムが必要である,という3つの指摘を受け止め,シナリオデータベースの充足化や,新規シナリオデータベースの生成,実観測データを用いた検証などを実施する予定である.また,学術誌への論文投稿に精力的に取り組む予定である.これらの活動を実施する上で,外部計算資源の利用費や大容量記録媒体の購入費用,論文投稿費用や国際誌投稿時の英文校閲費,学会登録費用として直接経費を利用する計画である.新型コロナウィルス感染症拡大状況によるが,可能な限りオンサイトで学術集会に参加することを計画しており,現在のところ国内外2件の発表登録を完了させている.
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Research Products
(1 results)