2021 Fiscal Year Research-status Report
Effect of aging effect on liquefaction characteristics based on dynamic shear modulus and dissipated energy
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21K20444
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志賀 正崇 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60907814)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 液状化 / 砂質土 / 累積損失エネルギー / 微小せん断剛性率 |
Outline of Annual Research Achievements |
砂質土の液状化特性を評価するためには、密度以外の要因が液状化中の応力ひずみ関係や応力経路に与える影響を評価する必要がある。特に、年代効果を持つ地盤の場合には、過圧密や微小繰り返しせん断等による砂のかみ合わせ効果の増大と、土粒子間の結合力によるセメンテーション効果の増大の両者が及ぼす複合的影響を、簡易なパラメータで表現する必要がある 本研究の1年目では、特にかみ合わせ効果が液状化特性にもたらす影響を、累積損失エネルギーとせん断波速度の観点から検討した。具体的には、これまで独自に開発を施してきた室内土質試験とせん断波速度の連続計測システムを用いて、異なるかみ合わせ効果を持つ同密度供試体に対する非排水繰り返し三軸試験を実施した。取得された応力ひずみ関係から、正規化累積損失仕事を計算し、液状化時における仕事を液状化エネルギー容量として算出し、せん断波速度などとの比較を行った。 結果として、主に3点の事実が示された。①供試体の部分的なネッキングや伸長側へのひずみの偏りにより、液状化エネルギー容量が過大評価される場合がある。②排水微小せん断履歴によって強化された土粒子構造を持つ供試体は、履歴を受けていない供試体と比較して、同一試料、同一密度、同一CSRであっても液状化エネルギー容量が大きくなる。③既往の豊浦砂と浦安砂に関する実験データに対して、間隙比関数で補正した微小せん断剛性率と両振幅軸ひずみ5%で定義される液状化エネルギー容量には一意な関係がある可能性が示唆された。特に3点目について、より広範な試料や条件下で同様の関係が成立する場合、従来の地盤調査と再構成試料を用いた室内試験によって原地盤の正規化累積損失仕事の推定が可能となる。このため、2年目においても引き続き同様の実験を継続して行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね計画通りに進行している。本研究はかみ合わせ効果とセメンテーション効果のそれぞれが液状化特性に与える影響を、累積損失仕事とせん断波速度の観点から検討することを目的としている。1年目でかみ合わせ効果のみに焦点を当て、要素試験とデータ解析を行った。要素試験では珪砂7号を用いて液状化試験直前の相対密度が同じになるように初期密度と排水微小せん断履歴を調整した。この調整により、同密度かつ土粒子構造が異なる供試体を作製し、この供試体に対して非排水繰返しせん断を実施した。 繰り返しせん断中の連続的なせん断波速度の計測には成功したが、得られたせん断波速度と有効平均主応力、累積損失仕事の関に有意な関係を発見することができなかった。この理由としては供試体作製時の加速度計間距離の計測精度や供試体の非一様的な変形による影響が考えられる。この点については非接触式のレーザー変位計や画像解析により、より精度の良い評価を行うことを検討している。 また液状化エネルギー容量に関する解析では、排水微小せん断履歴によって強化された土粒子構造を持つ供試体は、履歴を受けていない供試体と比較して、同一試料、同一密度、同一CSRであっても液状化エネルギー容量が大きくなることを示した。この容量増大と、繰り返しせん断履歴の直前におけるせん断波速度から算出される微小せん断剛性率を比較した結果、両振幅軸ひずみ5%で定義される液状化エネルギー容量と有意な相関が確認された。しかしながら、初期液状化後のひずみ発達の仕方や、局所的な変形によって算出されるエネルギー量にばらつきが生じることも確認されており、より詳細な検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の2022年度では、セメンテーション効果に焦点を当てる予定である。全体の方針としては、複数のセメンテーションの種類あるいは程度を持つ供試体を作製し、それらに対して連続的なせん断波速度の計測を実施すると共に、非排水繰り返しせん断試験を実施する。供試体作製時に使用する添加物としては、早強ポルトランドセメントや炭酸カルシウム、非塑性細粒分などを検討しており、養生方法としては常温下と高温環境下の2種類を準備している。供試体は比較実験を行うために1組2体用意する。片方は養生後、解体しフェノールフタレインやSEMを用いた微細構造の可視化に使用し、もう片方は要素試験に使用する予定である。 要素試験では、非排水繰り返しせん断を圧密後に直接実施する供試体群と、養生前後で応力履歴を作用させた後繰り返しせん断を作用させる供試体群に分ける。この分割は応力履歴が作用するタイミングにおいて供試体内部の構造が強化あるいは劣化するかを検討するために行う。得られた圧密と非排水繰り返しせん断試験結果から、圧密時の有効平均主応力とせん断波速度の非線形回帰を行い、その回帰結果を基準として、非排水繰り返しせん断試験中のせん断波速度の変化について考察を行う。また累積損失仕事と液状化エネルギー容量についての検討も実施し、繰り返しせん断前のせん断波速度と液状化エネルギー容量の相関式の提案を行う予定である。最終的には國生らの提案したエネルギー法と、提案したせん断波速度と液状化エネルギー容量の相関式を組み合わせ、実地盤でのケーススタディを行い、この相関式の適用可能性に関する議論を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度では新型コロナウイルスの感染拡大により、対面での学会参加がなかったため、旅費の使用が当初の予定を下回った。また購入予定であった試験機の計測制御用のセンサーやマイコンに関しては、プログラムや電子回路などを一部内製化することにより、費用が削減された。また高速バイポーラ電源については半導体の需要増から値段が高騰し、納期が遅れている。このため令和3年度中の購入は一旦見送り、適切な時期を見極めつつ令和4年度の上期における購入を検討している。
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