2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of dissolved organic matter in treated wastewater that affects water reuse in destination water bodies
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21K20455
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Research Institution | National Institute for Land and Infrastructure Management |
Principal Investigator |
石井 淑大 国土技術政策総合研究所, 下水道研究部, 研究官 (10911331)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 下水処理水の再利用 / 溶存有機物 / 精密質量分析 / 下水処理 / 固相抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、下水処理水中に含まれる溶存有機物(DOM)の中で、人体や環境に対して毒性を示す、浄水処理による除去が困難である等、放流先の水利用に対して影響を与えるDOMを探索し、それらの下水処理工程における分解・生成といった動態を明らかにすることを目的としている。本年度の具体的な実施内容と研究成果は以下の通りである。 (1)過去の分析結果や既往文献を整理することで、下水処理水が排出源であり、浄水処理後の水道水中にも存在していると推定されるDOMのリストを作成した。リストに含まれるDOMの多くについては精密質量数や推定分子式の情報しか無いが、一部のDOMについては構造等の情報もあり、その中には界面活性剤に由来すると推定されるDOMなどが含まれていた。 (2)下水流入水と処理水に対して、2種類の固相抽出法を用いて試料の前処理を行い、DOMの回収率を比較した。1種類目は充填剤にPPLを用いた方法であり、DOC回収率は46~61 %であったのに対し、2種類目は充填剤にHLBを用いた方法であり、回収率は19~21 %であった。本研究では、回収率がより高かった1種類目の方法を用いて試料の前処理を行うこととした。 (3)2箇所の下水処理場において、複数の処理方式の計8系列においてそれぞれ1回ずつ、最初沈澱池越流水と最終沈殿池越流水を採取し、(2)の方法により前処理を実施して保管した。 (4)(3)で採取し前処理を行った試料の内8種類について、試験的にOrbitrap型質量分析計を用いて分析してピーク抽出処理などの解析を行い、分析条件等の妥当性を確認した。その結果、約500種類のピークが一定の強度以上で検出され、MS/MSスペクトルも得られた。また、(1)で作成したリストに含まれるDOMと一致すると推定されるピークも検出された。これらの結果から、今後の分析における条件等を確定させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、2種類の固相抽出法の比較により前処理法を決定する等の成果を挙げることができた。一方で、新型コロナウイルスの影響により実験室の使用制限や出張制限が実施された影響で、採取できた下水試料数が当初の予定の半分程度となってしまったほか、Orbitrap型質量分析計を用いた分析が一部の試料に対してしかできておらず、分析結果の解析も遅れが生じている。 これらの理由により、「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではまず、本年度で延期となってしまっていた分の下水試料の採取と前処理を行うとともに、Orbitrap型質量分析計による分析を本格的に実施する。その後、分析結果の解析を行い、「研究実績の概要(1)」で整理したリストとの比較や、下水流入水と処理水における検出強度の比較を実施することで、下水処理におけるDOMの動態を明らかにすることを試みる。 また、実規模の活性汚泥リアクターを活用した実験を行い、DOMの消長と曝気量等のパラメータとの関係解明を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により実験室の利用制限や出張制限が実施された結果、採取できた試料数が少なくなり、前処理や分析に遅れが生じ、必要な消耗品の購入が先送りになったため、次年度使用額が生じた。 本年度に実施できなかった試料の採取や分析は次年度に実施する予定であり、そのために必要な消耗品の購入等に次年度使用額を使用する計画である。
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