2021 Fiscal Year Research-status Report
多雪地域の歴史的中心商業地における町家裏敷地の所有・利用メカニズムに関する研究
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21K20459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北原 麻理奈 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70912913)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 多雪地域 / 歴史的市街地 / 町家裏地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、青森県津軽地方黒石の旧街道筋に位置する歴史的中心商業地を事例に、カグジと呼ばれる町家裏地の所有・利用のメカニズムを明らかにすることにある。対象とする黒石の歴史的中心商業地6街区について、これまでに申請者らが行なった旧土地台帳を用いた土地所有変遷分析では、明治20年頃から昭和40年頃までのカグジの所有の流動性の高さが明らかにされている。しかし土地登記簿に一元化されて以降の登記情報を用いた悉皆調査は行っておらず、昭和40年代以降の土地所有変遷を把握することができていない。したがってカグジの所有の流動性が、厳密にどの時点までは高く、どの時点から停滞したのかを明らかにできていない。 2021年度はこの課題を解決すべく、①歴史的中心商業地6街区の土地登記簿を取得し、現在までの土地所有変化をカグジの流動性に着目しながら分析すること、②COVID-19の感染状況を鑑みて時期を見計らい現地に滞在し、積雪時のカグジの堆雪場としての共同利用状況を屋根型に着目し調査することの二点を計画した。 一点目については、対象とする6街区の全地番の土地登記簿を取得し、既に得ていた旧土地台帳の情報と併せてデータベース化の作業を進め、情報の整理を行なった。二点目については、降雪量の多い1月から2月にかけてCOVID-19の感染状況が悪化したため、積雪時のカグジの利用状況を調査することができなかった。この点については、2022年度冬に調査を行う予定である。 また本研究とも関連して、2021年度より始動した「黒石市まちなかエリアリノベーションプラン」に関する第2回市民ワークショップ(2021年12月19日)に参加し、研究成果のアウトリーチを意識して、整備予定の市民サービス施設とカグジを活用した広場の使い方に関する市民の方々の意見を傍聴した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする歴史的中心商業地6街区の土地登記簿を収集し、旧土地台帳の記録と併せてデータベース化を進めることができている。ただし町家裏地の積雪時の利用状況に関する現地調査は、COVID-19の予期せぬ感染拡大のため実施することができなかった。この点は2022年度冬に調査を行う予定であり、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した以下の三点については、COVID-19の感染状況を鑑みつつ現地滞在し、計画通り推進する。特にインタビュー調査については黒石市とも事前に情報を共有して調査先を選択し、最大限の配慮をすることを心がける。 ①カグジの共同利用実態についてインタビュー調査を実施する。②6街区全体を対象に、敷地間の物理的境界(柵・塀)の有無と種類を悉皆調査する。可能な範囲で土地所有者へのインタビュー調査を行い、隣合うカグジを遮る物理的境界がいつの時点から設置され始めたのかを明らかにする。③2ヶ年の研究成果をまとめ、都市計画学会ないし建築学会に査読付学術論文として投稿する。 また2021年度に実施できなかった積雪時のカグジの利用実態調査についても、2023年1月から2月に実施することを目指す。
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Causes of Carryover |
2021年度内は、COVID-19の感染拡大から予定していた現地調査を実施することができず、主に旅費にて次年度使用額が生じた。2022年度は現地調査を予定通り実施し、旅費として計上した助成金を使用する。
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