2021 Fiscal Year Research-status Report
熱水分移動と応力・ひずみ変化の連成解析による組積造建築の凍害メカニズムの検討
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21K20462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 一真 神戸大学, 工学研究科, 助教 (00908767)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 凍害 / 組積造建築 / 熱水分同時移動 / ひずみ / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には組積造の壁体を構成するレンガの機械物性の測定を行い、その異方性と不均一性を把握した。さらに、凍結融解過程のレンガのひずみ測定を行い、2022年度に行う予定の凍結融解条件下にある組積造壁体を対象とした熱水分移動・応力・ひずみ変化の連成解析に向け、機械物性とporoelastic parameters、変形の異方性の関係についての理論的検討を行っている。 また、組積造壁体を対象とした一次元の熱水分同時移動モデルを作成し、気象条件の日変動を考慮した壁体内の温度・液相含水率・含氷率の数値計算を行った。これにより、2022年度に行う予定の応力・ひずみ変化を考慮した検討に先立ち、レンガとは著しく物性値が異なるモルタル層が壁体の吸水・凍結過程に及ぼす影響の検討を行った。 モルタルは熱物性はレンガと比較的近いものの、高含水率域における水分伝導率が著しく小さいという特徴がある。壁体の凍結過程ではより低温になりやすい外気側表面の水分の化学ポテンシャルが低下し、壁体内部から水分が流入する。解析結果より、モルタル層が存在することでこのような凍結過程の壁体内の水分移動が妨げられ、壁体の外気側表面での凍結が抑制される一方、壁体のより深い位置まで凍結が進行する可能性があることを示した。 組積造壁体を対象とした検討では数値解析モデルが複雑になることを避けるために均質な物性値を用いて解析を行うことがあるが、本研究において構成材料の物性値の違いの影響を定量的に示したことは意義が大きいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大によりレンガの水分物性値の測定が当初の予定より進展しなかったが、代わりに2022年度に実施予定であった機械物性の測定を行った。また、2022年度に実施する数値解析に向けて熱水分移動モデルを用いた基礎的な検討や、応力・ひずみ変化を含めた数値解析に必要な物性値の理論的解釈を進めており、2022年度に向けての準備が当初の予定より順調に進展している。そのため、実施内容が多少前後しているものの、総合的にみて本研究課題は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2021年度に完了できなかったレンガの水分物性値の測定を行う。この結果と2021年度に行った機械物性の測定結果を踏まえ、既に構築した組積造壁体を対象とした一次元の熱水分移動モデルを発展させ、多次元の熱水分移動と応力・ひずみ変化の連成解析モデルを作成する。これにより物性値の不均一性に加え異方性にも着目し、それらの力学的な影響を含めた検討が可能になる。 解析結果を2021年度に行った凍結融解過程のレンガのひずみ測定結果と比較することでその妥当性を確認した後に、実際の壁体構成や環境条件を考慮した検討を行う。解析結果から様々な環境条件において壁体内で凍結水量や応力が集中する箇所を特定し、劣化に至るまでの熱水分移動と水分の相変化や圧力変化、応力・ひずみ変化のプロセスを明らかにする。
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Research Products
(4 results)