2022 Fiscal Year Research-status Report
不確実性の高い移動を伴う人びとの「まちの居場所」に関する実証的研究
Project/Area Number |
21K20468
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
石川 美澄 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (50733672)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | まちの居場所 / サードプレイス / 複数拠点生活 / 複数拠点生活者 / 高頻度旅行者 / ポジティブな移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①高頻度に生活拠点を移す複数拠点生活者および季節労働者、②生活拠点はほぼ変わらないものの頻繁に旅行に出かける国内旅行者を調査対象としたヒアリング調査を通して、不確実性の高い移動を伴う彼・彼女らの「まちの居場所」の獲得プロセスを解明し、その場所の特徴を明らかにするものである。複数拠点生活やワーケーションなど新しい生活様式が浸透しつつある我が国において、自らの意思でポジティブに移動する人びとの居場所の実態を把握することは、観光まちづくり等に新たな知見を提示できると思われる。 2022年度は、複数拠点生活者を対象としたウェブアンケート調査を実施し、その結果を日本都市計画学会の報告会ならびに日本観光研究学会にて発表した。 前者では、複数拠点生活者のうち主な居住地(以下、メイン居住地)にも補助的・補完的な居住地(以下、サブ居住地)にも「まちの居場所」があると回答した人は全体の5~6割程度だったこと、一方で自宅や職場等を含めてどこにも自身の居場所がないと回答した人も一定程度確認されたことを報告した。また、両居住地の「まちの居場所」の来訪目的や平均使用金額は同程度だったが、来訪理由や来訪頻度、平均滞在時間は10ポイント程度の差が確認されたことも示した。後者では、20代から60代までの年代別に「まちの居場所」の特徴を整理・分析した。その結果、年代問わず5割弱から7割程度の人びとは、メイン・サブの両居住地に「まちの居場所」があることが明らかになったこと、一方で「まちの居場所」はないと感じている人も年代を問わず一定程度いることを発表した。そして、サブ居住地に「まちの居場所」があると回答した者のほうが、それが「ない」あるいは「どちらともいえない」と回答した者よりも、サブ居住地に対する地域愛着にポジティブな評価を示す可能性があるということを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021度に実施したヒアリング調査を通して、複数拠点生活者の「まちの居場所」や「まち」に対する捉え方について新たな疑問が浮かび上がった。そこで、2022年度は調査計画を見直し、Webアンケート調査を新たに実施することとした。その成果は研究実績で述べたとおりである。調査計画を見直したものの、これについてはほぼ予定通りに進められた。その一方で、高頻度旅行者と季節労働者に対する現地調査は調査協力依頼や調整等が十分に進められなかった。また、調査対象者として季節労働者を設定していたが、それを見直し、今後は複数拠点生活者と高頻度旅行者の2者に限定して研究を進めていくことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高頻度旅行者に対するヒアリング調査ならびにアンケート調査を実施し、彼・彼女らの「まちの居場所」の特徴を明らかにしていく。すでに実施済みの1名に対する追加のヒアリング調査と、新規の調査協力者を募ってのヒアリング調査を進める。また、2022年度に実施した複数拠点生活者に対する調査票を修正するかたちで、高頻度旅行者に対するアンケート調査も実施する。
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Causes of Carryover |
研究計画の内容を見直したり、感染拡大防止の観点から現地調査を見送ったりしたため、とくに現地調査が十分に実行できなかった。そのため、使用金額に差が生じることとなった。2023年度は、高頻度旅行者に対する調査を進めることとする。
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Research Products
(4 results)