2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20471
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
野村 直樹 関西大学, 研究推進部, 非常勤研究員 (90909962)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 耐震補強 / RC造 / 片側鋼板補強 / 非耐力壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年地震が頻発化し、各地で災害の復旧活動が行われている。公立の小中学校の耐震化については99%近くまで進んでおり、病院などについても8割近くの耐震化が進められている。しかし、人が最も生活する住宅の特に区分所有のマンションのような集合住宅においての耐震化は、それらほど進んでいない。1981年以降の建物については新耐震基準で設計されており、大地震に対し耐えられるものになっているが、それ以前の建物については耐震性に注意すべき建物もみられる。 集合住宅には各住民が専用で生活する「専用部」と共用廊下・バルコニーやエントランスホールなどの居住者の共同で利用する「共用部」に分かれる。専用部は常時住民が利用していることから、耐震補強の場所として住民からの合意がとりにくいことがあるため、それ以外の共用部で補強ができるようにすることが集合住宅の耐震化に重要である。そこで、集合住宅の共用廊下にある非耐力壁に着目し、共用部からの鋼板を用いた補強で既存RC壁を利用した複合耐震壁による耐震補強工法を開発する。 本研究では初めにRC壁単体に鋼板を取り付け、RC壁と鋼板との間に無収縮モルタルを充填した工法により補強効果がみられるかを確認し、本工法を新たな耐震補強工法とするため、設計法の開発・提案することを目的とした。 本年度実施した実験は、鋼板の厚みにより補強効果に差があるかを確認するためにRC壁単体の試験体とその試験体に厚みが異なる鋼板で補強した試験体(2体)の計3体を作成し水平加力実験を行った。 実験の結果、RC壁単体の実験ではせん断破壊が先行するのに対し、本補強工法によるせん断耐力が向上し、曲げ降伏後のせん断破壊となり、破壊性情に変化が見られた。また、鋼板の厚さが大きくなることで変形性能が上昇したことから、RC壁のせん断余裕度(せん断終局耐力/曲げ終局耐力)が上昇したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、RC壁に対し片側から鋼板補強する耐力などを向上させる薄型耐震補強工法を開発することである。 以上の目的を達成するために計画実施された令和3年度実験では以下の知見を得た。 RC壁と鋼板補強した試験体の耐力は、補強したもののほうが高くなりせん断耐力の向上が見られた。さらに、鋼板の厚みの異なる試験体を比べると共に曲げ降伏し、その後せん断破壊した。しかし、鋼板の厚さの大きいもののほうがより大きい変形を起こしてからせん断破壊したことから鋼板を厚くすることで靭性が向上することが示せた。 以上の結果からRC壁に対し本工法を行うことでせん断耐力及び変形性能が向上することが提案できた。しかし、計画時では鋼板とRC壁との間に充填する無収縮モルタルの厚さによる比較を行う予定であったが、試験体作成が間に合わずに実施できなかったため、次年度に実施したいと考えている。よって「やや遅れている」と判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,当初の計画通りの実験に加え令和3年度に行えなかった実験を進めることを考えており、以下に示す内容を実施する予定である。 <令和4年度> ・RC壁の片側から鋼板を取り付け、鋼板とRC壁との間に無収縮モルタルを充填する耐震補強工法において、令和3年度で行えていない無収縮モルタルの補強効果を確認するため、無収縮モルタル厚の異なる試験体を実験する予定である。また、当初の予定通りに既存RC壁厚が補強効果に与える影響や無収縮モルタルの充填範囲が異なる場合の補強効果の変化を確認するための水平加力実験を行う。これより得られたデータをもとに本補強工法の補強効果を示し、設計法の検討を進める。
|
Causes of Carryover |
鋼板の厚さは一定で鋼板とRC壁との間に充填する無収縮モルタルの厚さを変化させた実験が行えずにいるために次年度使用額が生じている。 今後の計画として上記で行えなかった実験に加え、令和4年度に実施予定の試験体(充填範囲の変化、RC壁厚の変化)を作成し、実験を行う予定である。
|