2021 Fiscal Year Research-status Report
CD-MOFを鋳型とした均一サイズ金ナノクラスターの新規合成プロセスの開発
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21K20492
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永井 杏奈 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (30910400)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 多孔質材料 / 金属ナノクラスター / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナノクラスターは金属原子が数個から数百個集まることで形成され、その特性は構成原子数によって大きく変化する。また、金属ナノ粒子やバルク金属と異なる性質を持つことから、次世代材料として注目を集めている。しかし、金属ナノクラスターは凝集しやすく、構成原子数を高度に制御することは容易ではない。金属ナノクラスターの凝集を抑制する手法として、保護剤を修飾する合成方法が知られているが、クラスターのサイズを選択的に合成することは困難であるため、分子量毎に分離する手法が一般的である。このことから、サイズの均一な金属ナノクラスターを簡便且つ大量に合成できるプロセスの開発が望まれる。 これまでに多孔質ナノ孔結晶であるシクロデキストリン系金属有機構造体(CD-MOF)の規則的に配列したナノ空間で金ナノクラスターを合成することに成功したが、水に溶解させ、抽出した際に金ナノクラスター同士が凝集し、粒子サイズを保つことが困難であった。そこで本研究では、高いサイズ均一性を有する金ナノクラスターを簡便且つ大量に合成できるプロセスの開発を目的として、CD-MOFの細孔内にあらかじめ保護剤となる分子を導入し、それをテンプレート材として用いることで金ナノクラスターの合成を試みた。 2021年度は金ナノクラスターの保護剤を導入したCD-MOFを作製し、その構造や保護剤の導入量についてX線回折パターンやUV-Vis吸収スペクトルにより明らかにした。さらに、その保護剤を導入したCD-MOFのナノ孔内で金ナノクラスターを合成し、導入量をICP-AESにより調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目である2021年度は、保護剤を導入したCD-MOFの合成、その構造・物性評価、および、保護剤を導入したCD-MOFを用いて金ナノクラスターの合成を行った。当初の計画通り実験を進行でき、国内学会にて研究発表を行った。CD-MOFを用いた貴金属ナノクラスターの合成はこれまでの研究から導入量が低いなどの問題があったが、合成条件を検討することで導入量の増加がみられたことから、金ナノクラスター合成時の最適合成条件を検討するため、さらなる実験が必要である。加えて合成した金ナノクラスターの構造および物性を評価するための手法を検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、保護剤を導入したCD-MOFのナノ孔内で合成した金ナノクラスターの構成原子数やその構造について解析・考察を行う。構成原子数についてはMALDI-TOF MSを用いる予定であり、その分子数から構造を推定する。また、合成した金ナノクラスターの溶液中での抽出・単離を試みる。抽出・単離後の金ナノクラスターの凝集の有無については表面プラズモン吸収、合成した金ナノクラスターの粒子サイズについては透過型電子顕微鏡による観察により検討を行い、評価する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は着任初年度であったため、研究着手が遅れ、さらに、COVID-19の影響により参加を予定していた国際会議が中止となったため、次年度使用額が生じた。2022年度は昨年度購入予定であった分析機器の購入や、COVID-19の拡大状況を鑑みながら、国際学会・国内学会に参加することで補填することを計画している。
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