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2021 Fiscal Year Research-status Report

電子構造解析法の先端熱電材料への応用

Research Project

Project/Area Number 21K20496
Research InstitutionNational Institute for Materials Science

Principal Investigator

服部 裕也  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMSポスドク研究員 (00907975)

Project Period (FY) 2021-08-30 – 2023-03-31
Keywords熱電物質 / 電子構造 / 量子振動
Outline of Annual Research Achievements

近年、熱を電気に変換する熱電発電において、変換効率が従来物質の2~3倍の熱電物質(PbTe + Sr, Na)が発見された。本物質は、現在世界最大級の熱電変換効率を有する材料であるが、その優れた熱電物性の物理的起源は明らかになっていない。理論的には複数のバルクバンドの寄与が高い熱電性能を与えるとの説明がなされているが、熱電研究でスタンダードな測定手法である多結晶における高温物性測定では、マルチバンドの寄与は原理的に区別できない。そこで本研究ではPbTe + Sr, Naに対し、強磁場・極低温にて、単結晶サンプルでの量子振動測定を行うことで、個々のバンドが電子物性にどのような影響を与えるか評価する。
2021年度にはPbTe + Sr, Na単結晶サンプルの作製および電気抵抗・量子振動解析を行った。まずブリッジマン法により単結晶サンプルを得た。この試料に対し量子振動解析を行った結果、低温(T<150 K)では、L点のホールキャリアによってのみフェルミ面が構成されることが判明した。一方、T>150 Kの高温では、ホール抵抗の磁場依存性に異常が見られた。そこで磁気抵抗の解析手法の1つであるKohler plotを行った。様々な温度で測定した磁気抵抗データに対しKohler plotを行うと、散乱メカニズムが同一である場合1つの曲線に一致する。実際PbTe+Sr,Naの低温データ(T<150 K)は、Kohler plotが同一の曲線に重なる。一方高温(T>150 K)では、Kohler plotが低温の曲線に対し顕著に逸脱した。これはシングルバンド(L点)伝導からマルチバンド(L点+Σ点)伝導へのリフシッツ転移を実験的に捉えたものと考えている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2021年度は、単結晶PbTe+Sr,Naサンプルに対し量子振動解析・磁気抵抗解析を行った。量子振動解析の結果、低温(T<150 K)ではL点キャリアのシングルバンド伝導であることを示した。高温(T>150 K)では、L点とΣ点のキャリアのマルチバンド伝導を示唆する実験結果を得た。PbTe+Sr,Na系で、温度変化によるリフシッツ転移を捉えた研究はこれまで報告されておらず、熱電分野に大きなインパクトを与えると期待できる。2021年度は装置の故障も起こらず、計画通りに研究が遂行できた。

Strategy for Future Research Activity

マルチバンドの分離手法として研究計画当初では、量子振動測定を予定していた。しかし2021年度の研究の結果、マルチバンドの伝導が生じるのはT>150 Kの高温であることが判明した。本研究で使用しているPbTe+Sr,Na単結晶の量子振動が観測できる最高温度はT=50 Kであるため、別の実験手法が必要となる。
近年物性物理分野において、フェルミ面の形状が磁気抵抗の角度依存性に与える影響について、定量的な評価ができることが理論的に明らかになってきた。具体例としてフェルミ面が1方向に延びる楕円体であるとき、長軸方向に磁場が印加されるような角度で抵抗が最大になることが分かっている。PbTe+Sr,Naでは、L点とΣ点に存在するフェルミ面が異なる方向に長軸を持つ。そのため、低温から高温にかけて磁気抵抗の角度依存性を測定すれば、リフシッツ転移温度において、磁気抵抗の極大を与える角度が変化するはずである。2022年度では、磁気抵抗の角度依存性によりリフシッツ転移の実証および転移温度の測定、熱物性に与える影響を議論する。以上のデータをまとめて、論文として投稿する。

Causes of Carryover

購入を予定していたワイヤーソーの価格が値上げされたため、一部物品費を繰り越し、次年度に購入するよう変更した。

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Published: 2022-12-28  

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