2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K20496
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
服部 裕也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMSポスドク研究員 (00907975)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | バンド構造 / 量子振動測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では量子振動測定をはじめとした強磁場測定によりSr/NaドープPbTeの電子構造を解明することを目標とした。作製したSr/NaドープPbTe単結晶は、Sr,Naをそれぞれ0.5 at%程度含んでいたが、明瞭な量子振動が観測された。このようなヘビードープ試料で量子振動が現れるのは特異的であり、PbTeでの強いスクリーニング効果を反映していると考えられる。また量子振動の角度依存性を測定することで、低温(T=1.4 K)でのフェルミ面を決定することに成功した。ライトドープPbTeではフェルミ面は、L点を中心とする回転楕円体であると報告されている一方、Sr/NaドープPbTeでのフェルミ面はシリンダー型のフェルミ面に変形していることが判明した。サイクロトロン軌道がシリンダーの端を通るような磁場方位では、量子振動が強く抑制されることから、シリンダー端は複雑な形状をしていると考えられる。 またホール抵抗の温度依存性を解析することにより、第二価電子帯(Σバンド)端がフェルミ準位から50 meV程度下方にあることが判明した。このため本物質では、フェルミ準位付近で電子状態密度N(E)のエネルギー依存性が大きく、ゼーベック係数Sを増大させる理想的なバンド構造を形成していることが判明した。また磁気抵抗の角度依存性を測定すると、低温と高温で角度依存性が反転することを発見した。これは温度上昇に伴いΣバンドがフェルミ準位付近に近づくことで、一種のリフシッツ転移を起こしているためと考えられる。上記の結果を現在論文にまとめている。
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