2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of evaluation method for thin film magnetism by spin Hall magnetoresistance
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21K20497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根岸 真通 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (70911147)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 薄膜合成 / 酸化物 / イルメナイト型構造 / パルスレーザー堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本課題の研究期間が始まる8月までに、イルメナイト型構造を持つ非磁性体MgTiO3の薄膜堆積条件探索を行い、単結晶薄膜を堆積する条件を確立した。研究期間が始まった9月以降も、MgTiO3薄膜の堆積条件探索を継続し、試料表面の平坦性向上を目指した。堆積条件探索の結果、薄膜の表面形状が、基板温度や蒸着源へ照射するレーザーの条件によって大きく変化することが分かった。これらの堆積条件を調整することによって、原子レベルで平坦な表面を持つ薄膜試料を実現した。結晶性と表面平坦性に優れたMgTiO3薄膜試料の合成を達成したことは、イルメナイト型構造を舞台に磁性を探究するうえで重要な成果である。すなわち、非磁性のMgTiO3薄膜をバッファー層に用いることによって、バルク合成の難しいイルメナイト型磁性体を安定化させて探究する可能性が開ける。 そこで、イルメナイト型磁性体の候補として、MgIrO3に注目し、薄膜堆積実験を行った。MgIrO3は、キタエフ磁性体という新奇な量子磁性体の候補物質であるが、準安定相と考えられ、合成が難しい。MgIrO3薄膜の堆積条件探索を行う中で、薄膜のMg:Ir組成比が蒸着源から大きくずれてしまうことが分かった。そこで、堆積条件による薄膜組成比の変化を系統的に調査した。その調査に基づき、蒸着源の組成比と堆積条件を調整することで、薄膜組成比を制御する方法を確立した。これは、イルメナイト型MgIrO3を実現する前提となる成果である。 また、MgTiO3以外のイルメナイト型酸化物として、反強磁性秩序を発現するMnTiO3についても薄膜合成実験を行い、原子レベルの表面平坦性を持った単結晶薄膜を合成する条件を確立した。MnTiO3とは異なる磁気秩序をもつイルメナイト型酸化物FeTiO3、CoTiO3、NiTiO3についても、薄膜堆積用蒸着源を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたイルメナイト型酸化物群のうち、MgTiO3とMnTiO3の単結晶薄膜試料を実現することができた。FeTiO3などの化合物については薄膜堆積実験を実施することはできなかったが、蒸着源合成などの準備を進行することができた。また、当初の計画には含まれていなかったMgIrO3薄膜の堆積条件探索を実施した。以上を総合すると、本研究課題は、当初の計画からは異なるものの、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施した堆積条件探索結果に基づき、表面平坦なMgTiO3単結晶薄膜上に、組成比制御したMgIrO3を堆積することによって、イルメナイト型MgIrO3を安定化する実験を実施する。イルメナイト型MgIrO3を安定化に成功したら、スピン輸送現象の測定などによって磁性を評価する。 また、FeTiO3、CoTiO3、NiTiO3の薄膜合成も行い、イルメナイト型酸化物における磁性を探究する。
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Research Products
(3 results)